テニス部のあの人。





「そういえば私、この前大変な目にあったの。」
『何があったの、明日香??』


それはウワサの…










テニス部のあの人。










ここは、ブルー女子寮内の食堂。
普段ならここにジュンコとももえもいるのだが、今日は珍しく、ばること明日香2人でいる。

明日香が思い付いたように、ため息をつきつつ、先日あった事件を話す。


「以前、体育の授業がテニスだったときがあるでしょう??」
『あー、十代がテニス部の部長にしごかれてたやつ??』
「そう。それを聞いて、ジュンコとももえと私がテニスコートに向かったわよね。…ばるこ、あなたは逃げたけれど。」
『うっ、まだ根に持ってる??』
「別に、そういわけじゃないけど。」


ある鮎川先生の体育の時間、その日はテニスだった。
ラリーをしていた十代のレシーブした球が明日香目がけて飛んでしまったが、すんでのところでテニス部の部長、綾小路みつるがその球を弾いた。
そして、打たれた球はクロノス先生に直撃。
当てた本人は綾小路だというにも関わらず、クロノス先生は、元凶は十代であると怒る。
そんなクロノス先生をよそに、綾小路はひどく明日香を気に入ったようだったが、その時はキザな笑いと共に去った。

そして授業後、更衣室から出たところで、ジュンコとももえが楽しそうに綾小路のことを話していた。ばること明日香は呆れたようにそれを聞いていたのだが、そこに翔が助けを求めに来た。
怒ったクロノス先生が、根性を鍛え直すよう十代を1日テニス部に入部させ、それで十代が綾小路にしごかれているのだと。

明日香たちは急いでテニスコートに向かおうとするが、ばるこだけは青ざめた様子で『あ、綾小路…二度と会いたくないの!!』と叫び、逃げた。









「私たちはそのままコートへ向かったんだけど…」
『うんうん。』









4人がコートに着くと、すでに十代は体力の限界であった。
明日香は、コートに向かう途中、大徳寺先生に聞いた、行方不明になっていた万丈目を見かけた人がいる、ということを十代に話すのだが、2人が話す様子を見た綾小路は嫉妬に狂い、フィアンセの座を賭け、十代にデュエルを挑む。
初めは困惑していたが、デュエル好きな性分、十代はデュエルの申し出を受ける。










『っていうか、受けるのかよ!!』
「ジュンコも同じこと言ってたわ。」







サービスエース、などといったテニス独特のカードに苦戦するも、持ち前の運で綾小路を下す十代。


「なぁ、明日香。俺、勝っちまったんだけど…」


困った様子で十代が明日香に話し掛ける。
ジュンコやももえ、翔は「まさか、告白!?」と思ったのだが





「ふぃあんせ、って何だ??」


ガクッ


「……バカ。」


その場にいた全員が呆れ果て、明日香は去っていくのであった。









「っていうことがあったの。」
『うへぇ。明日香、大変だったね。…良かった、行かなくて。』
「そういえばばるこ、綾小路には二度と会いたくない、って言ってたわよね??」
『うん、言った。』
「十代に負けて、泣きながら走り去った彼がね、こう言ってたの。」



うわぁぁぁん、ばるこクンだけでなく、天上院クンまでもかぁッ―――


「あなた、面識があったの??」
『うーん、そう。私も前に似たようなことがあって…まだ準がブルーにいた頃ね…』








「きっ、キミは…白衣の天使か!!」
『いや、私、白衣着てませんし、別にライフ800回復とか出来ませんから。』
「カードではなくて…ばるこクン、キミは、僕だけのエンジェルだ!!」
『ひぃっ!!』


ここは保健室。
クラブ中に怪我をしたとやって来たのは、話題の綾小路。
その時に限って鮎川先生は出張、いたのは保健委員であるばるこだけだった。

丁寧に手当を行うばるこに一目惚れをしたのか、綾小路は突然、ギュッとばるこの手を握った。
そして、白い歯をキラリとさせ、ばるこを口説こうとする。


「僕と…結婚しないか。」
『えぇっ、初対面な上、何かプロセス欠けてませんッ!?』
「関係ないさ、見てごらんあの空を!!僕たちの未来は、あの太陽よりも、幾千の星よりも輝いている!!」
『先輩、カーテン閉まってます。』
「とにかく、キミと僕とは運命共同体なんだ!!」


ガシッと肩を掴まれ、あまりの熱血さ、強引さも手伝って、ばるこは半泣きになる。


「泣くほど嬉しいのかい??僕も嬉しい!!さぁ、明日に向かって走り出そう!!」
『何でこんなことになるのよぉー!!』


そのとき、ガラッと保健室のドアが開いた。


「おい、ばるこ。保健委員の当番とやらはまだ終わらないのか!?……な、何を……」


入って来たのは、ばるこの彼氏である万丈目準。
ドアを開けるや否や、彼は驚きのあまり立ち尽くした。
それも当然だろう、彼が最初に目にしたのは、彼女が知らない男に肩を掴まれ、涙目になっている。


「ばるこ、お前、何をしているんだ…??」
「キミは…確か、ブルー1年の万丈目クンじゃないか。キミ、ばるこクンとはどんな関係なんだ。」
「俺はばるこの彼氏だが。」
「な、何だってぇぇ!!」
『準〜〜〜!!』


驚きのあまり、力が緩んだのだろうか、ばるこは綾小路からするりと抜け出し、万丈目に駆け寄る。


「な、何故だいばるこクン!?さっきキミは、僕のプロポーズに涙してくれたじゃないか!!」
『嬉し涙じゃなくて、困ってどうしようもない涙です、先輩。それに、私には準がいますから、スミマセン、てへへ!』
「くっ…僕は…僕は今、モーレツに嫉妬している!!」
『え。』
「万丈目クン、デュエルだ!!ばるこクンのフィアンセの座を賭けて!!」
『こっ、困るんですけど!!今言ったじゃないですか、私には準が…』
「ばるこクン、男には、避けられない戦いというものがあるんだ!!」
『じゅ、準〜〜〜』
「大丈夫だ、ばるこ。返り討ちにしてやる。」
『綾小路先輩は、カイザーに負けず劣らずの実力者らしいの。万が一、準が負けたら私は…!!』
「お前は一生俺が守ってやる。決めたんだ。そのために、俺はこいつを倒さなければならない!!」
「よくぞ言った、万丈目クン!!さぁ、行くぞ!!」


「「デュエル!!」」







『結局は準が勝って、綾小路も諦めてくれたみたい。』
「そう、あなたもそんな目に…でも良かったわね。さすがに万丈目君は知ってたでしょ、フィアンセ、って言葉。」
『そっ、それはそうなんだけどね。』
「どうしたの??」
『そのデュエルの後…』






「ばるこ、勝ったぞ。」
『よ、良かったぁ…でも危なかったじゃんか!!』
「う、うるさいぞ!!それより、忘れたとは言わせないぞ。」
『…な、何を??』
「勝った方が、お前のフィアンセになれる。」
『…恥ずかしい。』
「フッ、決まりだ。…ばるこ、一生、俺から離れるなよ。」
『と、当然!!…へへ。』


照れつつも、満面の笑みを浮かべて答えるばるこに、万丈目も、普段では見せないような優しい笑みを浮かべる。


「ばるこ。」
『何??』
「目、閉じろ。」
『ん。』


触れるだけの、軽いキス。

しかし、それだけでは足りないのか、万丈目はさっきより少し強引に口づける。


『っんぅ…』


深くて、甘い―――


ガラッ


「万丈目さん!!どこにいらっしゃって……ま、間違えました!!」
「どうしたんだ、慕谷??万丈目さん、探しまし……てません!!偶然です!!」


突然入ってきたのは、慕谷雷蔵。
そして続けざまに来たのが取巻太陽。
共に、万丈目を慕う取り巻きである。

万丈目を探していたのだろうが、偶然にも万丈目とばるこのキスシーン(しかもディープ)を見てしまった2人は、「「すみませんでした!!」」と謝ると、すぐさまどこかへ去っていってしまった。







『何が災難って、キスシーンを取り巻きの人たちに見られたことだね。』
「よりによってあの連中に…それは嫌ね。」
『ふぅ。アカデミアには、準以外にまともな男子っていないのかな。』
「それはノロケだわ、ばるこ。」
「明日香さま、ばるこさん。お揃いで何を話していらっしゃいますの??」
「ちょっと〜、私たちもいれなさいよね。」
『ももえ、それにジュンコ!!』
「ちょっと、ばるこのノロケ話に付き合わされてたの。」
「またぁ??ばるこ、あんたも飽きないわね。」
『そんないつも話してるかぁ!?』
「あら、気付いてないんですの??」
「そうよ、ばるこ。あなた、話すときは何かと万丈目君のこと言うわよ。」
『…マジで??』


ももえとジュンコが話に加わり、女子同士の話はさらに盛り上がる。



彼女たちの会話が終わるのは、いつになるのだろうか―――



++ END ++





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