ウサギの飼い主






久しぶりのデートはカフェテリア。










ウサギの飼い主










『わぁ、何食べようかなぁ。』


最近は何かと忙しく、一緒に居られる時間がなかった。
でも、今日は珍しく準の方から一緒に過ごそうと誘ってくれた。


「ご注文はお決まりでしょうか??」


店員さんが注文を聞きに来る。


「ばるこ、何にするんだ??」
『んーとね、チョコレートパフェとショコラケーキとココア。』
「彼女に、ソフトクリームとショートケーキと牛乳を。」
「かしこまりました。」
『えぇッ!?違ッ…間違いすぎでしょぉ!?』
「何だ、何か文句があるのか??」
『罪悪感無し!?…店員さんッ!!チョコレートパフェとショコラとココアです!!』
「申し訳ございませんが、当店ではお出ししておりません…」
『マジですか!!』


そういえば、カフェテリアの内装が変わっている。
前までは、薄ピンクを基調とした可愛らしいつくりだったが、今は――言うまでもないが――白い、全てが白い。
私はガックリ、と肩を落とした。

カフェテリアまでホワイト化されてたのね。


ホワイトサンダーとなった準は、斉王様斉王様って、私にかまってはくれなくなった。
だから、私は準を追いかけるために、準のそばにいるために、光の結社に入ったのだ。


でも、こんな白ばかりの生活―――


「お待たせ致しました。」


思っていたより早く、注文の品が来た。


『いただきまーす』


絶対にチョコ系のものが食べたかったわけでもないので、半ば仕方なく、私はソフトクリームが食べる。


「美味いか??」
『うん、美味しい。』


美味いかと聞く準は、いつもブラックコーヒーを無糖で飲む準からは想像できないが、牛乳を飲んでいる。
それが、激しく似合っていない。


『はぁ…』


準から誘ってくれたのが、嬉しくないわけではないし、ソフトクリームがまずいわけではない。

だけど、無意識にため息が出るのは、準がホワイト化したからだろうか、私を取り巻く世界がホワイト化したからだろうか??

もちろん、私が身に纏う制服も白いのだが―――


でもこれは、光の結社に入りたかったからじゃない。
準のそばに、いるため。



「ばるこ。」
『ん??』


突然名前を呼ばれ、少し驚く。
そして準のほうを見てまた驚く。

意外と顔が近い、そう思ったのは一瞬で―――


『っ…んぅ…!?』


一瞬のうちにキスされて、一瞬のうちに口内に侵入される。


『っじゅ、準…何??』
「甘いな…フッ。別に、ソフトクリームを味見したくなっただけだ。」
『…バカ。』


意地悪く笑う準を軽く睨む。
でも、その笑みは、以前の準のそれと変わらない。

やっぱり、好き。


「ほら、溶けるぞ。」
『っわ、ホントだ…!!』


溶けたソフトクリームが、私の指を伝う。
またここで準と目が合ったら、「舐めてやろうか??」って、意地悪く聞いてくるのだろう。


「…ばるこ。」
『何??』


お手拭きで指を拭く。
そこで、準が話しかけてくる。


「指、『いや結構。』
「…まだ何も言ってないだろうが!?」
『分かるし!』
「じゃぁ何だ、言ってみろ。」
『えぇッ、言うの!?』
「もしかしたら、ばるこの思っていることとは違うかもしれんぞ。」
『いやっ、その、ねえ…?』
「何だ。」


今度は、呆れたように笑う。
その顔も、好き。


「チッ、もうこんな時間か…」
『どうしたの??』
「いや、少し、斉王様に呼ばれていてな。」
『もう、行くの??』
「すまない…」
『良いよ、忙しいのに、合間を縫って時間つくってくれたから。』


そう言って、私は微笑んだ…つもり、だった。

―――私より、斉王なの…??
でも、準は幹部だし…



葛藤の中で、私を苦しませないで。


「そんな、一生の別れみたいな顔をするな。」
『準…だって…』
「お前にそんな顔されたら、俺は斉王様のところへ行けなくなるではないか。」
『行かないで、って私が言ったら、困るくせに。』
「フン。そんなもの、行かないに決まっているだろう??」
『…行かなかったら斉王様に怒られるよ??』
「俺が今ここで見るべきなのは、未来じゃない。…俺が大切にしなければならないのは、ばるこ、だろう??」
『準…』


真っ直ぐに見つめられて、目頭が熱くなるのを感じた。
鼻を啜りながら俯く私の頭を、準はくしゃくしゃと撫でる。


『…10分。』
「何がだ??」
『斉王様のところへ行ったら、10分で帰って来て。待ってるから。』


ちょっと、強気に言ってみる。
平気だと見せるための、強がり。


「そうだな。誰かさんが寂しさで死んだら困るからな。」
『私、ウサギじゃない。』
「おかしいな。目の前にいるのは確かに目が真っ赤なウサギなんだが。」
『うぅ…』
「フッ。なるべく早く帰る。」


そう余裕そうな笑みを浮かべると、まるでなだめるかのように私に軽くキスをして、準はカフェテリアを出た。


ホワイトサンダーは、紛れも無い準だ―――


色は違うくても、私に触れる温かさは変わらないことに、今更気がついた。


準が帰ってくるまでに、泣き止もう。





++ END ++





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