春。






恋の季節、かな。










春。










三寒四温、と言うだけあって、昨日まで暖かかった気候も一変、春らしい格好をするには、今日は少し寒い。

今日は準とデート。

待ち合わせの場所には、約束の時間より30分早く着いてしまった。
準はいつも10分前の時間に来るので、あと20分は暇である。


『……寒。』


冬から春の変わり目は風が強い。

私が着ている薄手のスプリングコートは風をよく通す。


準、早く来ないかなー。
外は寒いし、喫茶店に入って温かい紅茶が飲みたい。
そうしながら、どんな話をしようか。
準はよく聞き手に回るから、飽きさせない話をしよう。
それから、その次はどこへ行こう。
いや、きっと準のことだから、強引に彼の買い物に付き合わされるのだろう。


そんなことを考えると、後ろから「ばるこ」と呼ぶ声が聞こえた。


『あ、準。』
「珍しいな、ばるこが俺より早く来るとは。」
『えへー、1秒でも早く準に会いたかったからねー。』
「……バカ。」


プイッとそっぽを向く準。
そのそぶりとは裏腹に、頬が少しだけ紅くなっているので、何だか笑える。


「…笑うな。」
『何よ、照れちゃってー』
「ばっ…!?だ、誰が!!」
『もぅ、素直じゃないんだから。』
「ええい、ウルサイ!!ほら、行くぞ!!」
『あっ、ちょ…』


半ば強引に私の手を取って、準は歩き出した。


「……??」
『え、何??』
「どれくらい待ったんだ??」
『そんな待ってないよ、20分くらい。』
「手が冷たい。」
『心があったかいからかな??』
「バカ。今日は寒くなると、天気予報で言ってただろうが。…その格好、寒いんだろ??」
『まぁ、ぶっちゃけねー。でも仕方ないよ、機能性よりファッション性にこだわりたい年頃だから!』
「ったく……来い。」
『えっ、まずは喫茶店行こうよ。』


すると準は立ち止まることもなく、だけど照れたような声で言う。


「お前が風邪でもひいたら、俺が看病しないといけなくなって困るからな。それに合うストールでも買ってやる。」
『ホント!?やった!!』


でもね、それまではやっぱり肌寒いから…


『くっついて良い??』


身体を準にすり寄せる。


「お、おい!!くっつきすぎだッ!!」
『だって寒いー!!』
「い、今だけだからな!!」
『うん!!』




その口調とは裏腹に、私の肩を抱く腕は優しかった。




+ END +




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