二人でサボり。






『ふぁ〜ッ、よく寝たぁ…』


昼の木陰は私のテリトリー。










二人でサボり










確か、1時間前。
明日香とご飯を食べて、その後私はここへ移動して、そしてのんびりしているうちに眠りに就いたのだ。
しかし、昼休みは1時間しかない。
ご飯の時間を差し引いて、私にあった時間はものの30分程度である。

つまり―――


『…寝過ごした…』


50分授業で30分の遅刻、すなわち授業を受ける時間は20分しかない。


『フッ…サボり決定。』
「全く、お前というやつは。」
『準!!』


ハッとして横を見ると、心底呆れた顔で準が私の隣に座っている。


『何、いつからいたの??』
「ばるこが寝た直後だ。」
『起こしてくれれば良かったのに。』


ご飯を食べた後に別れた明日香でさえも、私を心配して携帯に電話してくれていたと言うのに。
…寝ていて気がつかなかったけれど。


「お前が気持ち良さそうな顔で寝ていたから、出来なかった。」
『じゃぁ、ずっとここにいてくれたの??』
「ああ。無防備だから心配しただろうが。」
『そっかぁ…準もサボりかぁ。』
「ばること一緒にするな。」
『サボりじゃないなら、何。』
「…気分が優れない理由で、保健室にいることになっている。」
『要はサボですよね!?』
「ええい、うるさーい!!」
『図星のくせにぃーッ!!』
「本当にお前は…ッ」


―――え…??


『んん…んーっ!!』


突然の出来事に驚いたが、息が苦しくなってきたところで、準の胸をドンドンと叩く。


「フッ、大人しくなったな。」
『い、いきなり……!!』
「起こすのも気が引けるが、この寝顔を誰にも見せたくなかったんだッ!!文句あるか!?」
『めめめ滅相もございませぇん!!』


あれ、何で私謝ってるんだろう!?


『ん、そう言えば今日の午後の授業って、特別に斉王が…あ、斉王様が講義するんじゃなかったっけ??』


私は光の結社の一員だけど、準ほど信仰深くない。
と言うよりは寧ろ、信仰していない。
ただ、準についていきたかっただけだから。

そんなわけで、先程目が覚めて寝過ごしたと気付いたときは、斉王の話を聞かなくていいのでラッキーだと思った。
それと同時に、怒った準の顔が浮かんで少しへこんだのだが。



「確かに斉王様の御言葉をお聞きしたかったが…フッ、俺もまだまだのようだ。ばるこの寝顔に負けてしまった。」
『えー、幹部のくせにー。』
「何だ。褒め言葉だぞ??」
『あれ、そうなの??』


まぁ、今のところ準の中で、私は斉王に勝っているのだろう、それは嬉しい。
でも、いつか準が私を見てくれなくなったら…―――


『いつまでも、まだまだの準でいてね。』
「何だ、それは。」
『斉王様よりも、私を見ていてってこと。』
「当たり前だろう。…俺の中で、ばるこに勝るものなどない。」
『本当ー??』
「ああ。たとえそれが、斉王様でもな。」
『準ー!!』


準の優しい笑みが嬉しくて、思わず抱き着いた。


「やけに積極的だな。」
『今日はこのままでいたいの!!』
「何言っているんだ。今日は光の結社の集会があるだろう。」
『……え。』
「講義は聞けなかったが、集会が楽しみだ。」
『いやいや、斉王よりも私じゃ……』
「斉王様によって導かれる、俺とばるこの道……素晴らしい。」
『あの、私の話聞いてますか??』
「フッ。それまで、ばることこうして過ごすのも良いだろう。」


ギュ…


そうして私の肩を抱くのは嬉しいけど、何だか準の自己解決な気もする。


『私、今日はここから動かない。』
「何だ??」
『私は今日はずーっとこの木のしたにいまーす。』
「集会はどうするんだ。」
『動かないので、行けませーん。』
「天上院くんはどうするんだ。きっと怒るぞ。」
『うーん…うん、謝る。準は、集会に行ったら良いよ。』
「ばるこはどうするんだ。危ないだろう。」
『そうだよね、危ないよね…一人じゃ。』


紙一重の、賭け。
一緒にいてくれるか、愛想を尽かされるか。


「ハァ…仕方のない奴だ。」
『うん??』
「今日だけは、ばるこのわがままに付き合ってやる。」

『本当??』
「俺は、嘘はつかん。」
『やった!!じゃぁ、もう一回、昼寝しよう!!』
「何でそうなるんだ!?」
『この木陰がね、気持ち良いんだぁ。はぁ…あと3秒で寝る。』


ゴロン…と、寝転がる。
日差しは弱くないが、木陰のお陰でひんやりとする。
芝生は適度な長さに伸びていて、ふわふわしている。
ああ…これが斉王の導く私と準の道なら…


「今は良いが、そのうち日が暮れて寒くなるぞ……って、本当に3秒で寝たのか。」
『…すーすー』
「全く、風邪でも引いたらどうするんだ。」





目が覚める頃には、太陽は沈みかけ、肌寒くなっていた。
起き上がると、やっぱり隣には準がいた。
そして、純白の上着は私にかけられている。


『上着、かけてくれたんだ。』
「ああ。」
『準、寒くない??』
「別に、寒くなどない。」
『嘘ぉ。』


準の隣に、寄り添うように座ると、準の体が少し冷たくなっている気がした。


『冷たいよ。やっぱり寒いんじゃん。』
「フン。俺は、ばるこが寒くなければ良いんだ。」
『あは、嬉しいなぁ。でも本当に寒くなってきたから、帰ろっか。』
「そうだな。」
『今日はねぇ、私が夕ご飯作ってあげる!!』
「また珍しいな。」
『何か嬉しいから、そんな気分なの。何が良い??カレーとか??』
「当然、ホワイトな。」
『はーいはい。』


二人仲良く、ホワイト寮へ帰る。
私って、やっぱり愛されてるんだなぁ、今日改めて思った。





もちろん次の日、私たちは明日香に怒られました。





++ END ++


yamaneさまに捧げます*°



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