スランプ
『モンスターで攻撃よ!いっけー!』
「うっ!……あれ、痛くない?」
『うそ!フィールの衝撃は!?』
「いや……あまり感じないよ?」
『んなっ……!!!』
スランプ
『フィールが……使えなくなってしまった……!』
ガクッと私は膝をついた。
ジャック戦でフィールが使えるようになったと思い、それから施設のみんなとデュエルをするが、私の戦闘ダメージを与えても、みんな「フィールを感じない」と言う。
『な、なんで…』
「ろじこはジャックとデュエルしたときにフィールを使えたんだよね?なら、もう一度ジャックとデュエルしてみたら?」
『なるほど!!』
友達の助言を受け、私はジャックを探しに行く。
『ジャックー!』
「ろじこ…貴様、いつの間に俺を呼び捨てに。」
『昨日の敵は今日の友達!』
「くだらん。…で、俺に何のようだ?」
『デュエルよ、ジャック!』
「ほう…?俺にリベンジする気か。いいだろう、返り討ちにしてやる!!」
ジャックは不敵な笑みを浮かべ、デュエルディスクを構える。
「『デュエル!!』」
『私はエレメント・ヴァルキリーを召喚!このカードはフィールドに炎属性がいる場合、攻撃力が500アップする!』
「く、俺の紅蓮王フレイム・クライムを利用するとは生意気な!」
『ジャックの紅蓮王フレイム・クライムを攻撃するわ!』
「ぐっ…、……!?」
『どうよ!?』
エレメント・ヴァルキリーの攻撃が通り、身構えるジャック。
しかし、ジャックはその後うめき声をあげることも、顔をしかめることもせず、無言でこちらを見る。
「ふざけているのか!なんだ貴様のその腑抜けた攻撃は!」
『え?』
「俺を潰すのではなかったのか!!」
『いや、そこまでは言ってない……』
「どうした!?こんなフィールでは俺を倒すどころか、足一歩も動かんわ!!」
『う、うそ…!』
完全に、フィールが使えなくなった…!
『ど、どうしよう…!ジャックどうしよう!フィールが使えなくなっちゃった…!』
「何?」
『す、スランプなのかな…!』
「馬鹿。スランプとは元々できる奴ができなくなることだ。」
『ぐぬぬ』
じゃぁ何であの時私はフィールを使えたんだろうか…
『やっぱり気合いが足りないんだろーか。ジャックはフィールをどんな気持ちで使さってるの?』
「そんなものいちいち考えるわけないだろう!ただ全力で俺に刃向かう相手を潰す!それだけだ!」
『おっかないなぁ…』
「ろじこ。お前こそ、どんな気持ちでフィールを使おうとしている?」
『え…?』
よく覚えてないなぁ。
ジャックと戦ったときは、私が京介にフィールの使い方を教えてもらってて、でもあんま出来なくて、そこにジャックが現れて…
『ジャックが京介の悪口言ったから怒って、ジャックを懲らしめようと思ってデュエルしたら……あっ!そうか!ジャック、もう一度京介の悪口言ってくれない?』
「なんだそれは、くだらん!ふん、そういうことなら鬼柳に相談するんだな。」
『あーんジャックの意地悪!……あ、行っちゃった。』
仕方ないなぁ。
京介に相談しに行くか……
いつも京介には教えてもらってばかりで悪いから、他の人にも助けてもらおうと思ったのに。
『きょーすけー!ちょっとフィールを教えて……あ。』
「あぁ、ろじこ。悪い、今こっちでデッキの相談に乗ってて…」
そこには知らない女の子と手を重ね唇も重ねようとする京介が………って違う違う!!
カードを広げ、女の子のデッキを見ている京介がいた。
『あ…そっか、じゃぁいいや。じゃぁまた今度にするね!』
私はすぐさま、京介がいた部屋を後にした。
そうかー、そうだよなー…
京介は、ジャックと1,2を争う実力の持ち主で、優しくてジャックより親しみやすいから、みんな頼っちゃうよね。
うーん…別に、私だけに優しくしてくれるわけじゃないって、知ってるけど。
うーん…………
何、これ。
『ふぅ、今日は何だかいろいろ散々だ…』
「あっ、ろじこ!」
『え?』
名前を呼ばれたと思って振り返ると、先ほどデュエルをした、「3」と番号をつけた男の子がいた。
「どう?ジャックとデュエルしてみた?」
『あ…それが、ジャックとデュエルしてもフィール使えなくて。』
「そうなの?そっかぁ…」
『ね、もう一度、デュエルしてくれない?』
「えっ!…いいけど、ろじこ大丈夫?今日ずっとデュエルしてるだろ?」
『いい、大丈夫!デュエルしてないと、ずっと悶々考えてしまうし……いろいろ。』
「え?」
『な、何でもない!早くフィール使えるようになって、みんなに追いつかないと!』
「わかった、デュエルだ!」
本日何度目かわからないデュエル。
でも、下手な私だから、頑張らないと。
京介に何でもかんでも頼っちゃダメだ!
自分でできるようになって、教えてー、じゃなくて、見て見て出来るようになったよーって言えるようにならなきゃ!
『よし来たっ!私は召喚したアテナで攻撃よ!!いっけー!』
アテナの攻撃が通る。
そして…
「うわぁーっ!」
相手はフィールに飛ばされ、尻餅をついた。
『あ…!ご、ごめんね!大丈夫!?』
「いてて…大丈夫だよ。それより、フィール!」
『あ…』
フィールが、また使えるようになってる…!!
「良かったね!勘が戻った?」
『ありがとう!お陰で私…!』
「馬鹿。勘が戻ったとは、元々できる奴が使う言葉だ!」
『ジャック!?』
「は、はは…」
「鬼柳の指導が実ったか?」
『あ、あう……それが』
「違うのか?」
何て説明しようか……
『京介に聞きに行ったら、違う女の子のデッキ相談に乗ってたみたいで……それで、畜生一人で頑張らなきゃと思ったら……さっき、できるようになったの!』
「……えっと、それは…?」
「くだらんな。」
『え!?』
何でどうして!?
一人でできたんだよ!?
一人でできるもんだよ!?
「何にせよ、もう俺とのデュエルでフィールが使えないというような生温いことはするなよ。」
『え、あ、うん!ありがとうジャック!』
「とりあえず、良かったね!また明日ね、ろじこ!」
『ありがとう、また明日!』
仲間と別れ、それぞれ部屋に戻る。
『ふぇー、今日は疲れたなぁ…』
一つため息をつき、私も部屋に向かって歩いた。
+Continue+
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