目覚める力




「いや、ろじこ。だからフィールっていうのは…」
『気持ち!感覚!センス!』
「なんて説明するか…」












目覚める力










ハァー…、と京介がため息をつく。

すいませんねぇ、頭悪くて。



私は京介にフィールの使い方を教わっている。

しかし、何回デュエルしても、フィール発生装置は私の意気込みに応えてくれない。



「別に攻撃的にならなくてもいいんだ。ただ、俺をぶっ潰す気持ちで来ればいい!」
『矛盾してるよそれ…!!』



ふにゃ、と座り込む私に、京介は苦笑いを浮かべ、隣に腰を下ろす。



「始めたばかりなんだから仕方ないさ。また明日も頑張ろうぜ。」
『ありがとう、京介。』



二人でデュエル場に座っていると、目の前に金髪の少年が現れる。



「全くぬるい奴だ!おい、鬼柳!そんな奴と一緒にいるとお前の腕まで落ちぶれるぞ!」
『んな!?』
「おいジャック、言い過ぎだ!」



ジャックくんは私のすぐ前に立つと、見下すように笑う。



「ふん。ここはお前のように遊び半分でデュエルをしている奴の来るところじゃない。」
『あ、遊び半分なんかじゃ…』



すっげー怖い人でてきたんですけど!!

…と、ジャックくんのあまりの迫力に、怖気付いてしまう。

何よ、同い年くらいでしょぉ…!?



「ジャック、ろじこはまだここにきて浅いんだ。俺たちだってすぐにフィールを使えるようになったわけじゃないだろう?」
「そいつをかばうのか、鬼柳?その枷を背負ってどれだけ進める?俺とお前の差は開くばかりだ!」
『ちょっと待ってよ!私をよく思わないのはわかるけど、京介の悪口言うのは違うんじゃない!?』
「だからぬるいんだ。仲間など偽り、弱いものが使う方便だ!そう。ろじこ、お前も、そして鬼柳もな!」
『…ジャック。デュエルディスクを構えなよ。』
「ほう…?」



私は立ちあがり、デュエルディスクを構える。

ジャックくんは、不敵な笑みを浮かべてこちらを見る。



「叩き潰してやる。来い!」
「おい、ろじこ…あんなにデュエルした後だぞ?大丈夫か…?」
『いい!京介の悪口言うやつは許さない!』



「『デュエル!!』」



よく考えずにジャックくんとデュエルしてるけど、そういやジャックくんがデュエルに負けてるとこ、見たことないな。


確かに友達はみんな、ジャックは強い、と口を揃えて言うけど…




まじ?


私、京介にも一回も勝ったことないよ??



「俺は紅蓮王フレイム・クライムを召喚!効果により、俺の場の炎属性モンスター×400のダメージを相手に与える!」
『っきゃぁぁぁ!』
「さすがだな、ジャックのフィール…400ポイントなのにこの衝撃だ。」
『これが、ジャックくんのフィール…!』
「ふん、この程度で悲鳴をあげるとは情けない!」
『…っ、私のターン!』



京介は、私がここに来てから、いつも私の特訓に付き合ってくれる。
でも、それだけじゃなくて京介はみんなに優しい。
デュエル実験でも、フィールで飛ばされた相手に手を差し伸べるし、どんな弱い相手にも対等に向き合う。


ジャックくんは、どちらかと言えば高みを目指す気持ちが大きくて、相手を倒すことを常に考えてる。


確かにタイプの違う二人。
どちらが良いわけじゃない。



でも…



『私の本気!エンシェント・ホーリー・ワイバーン!!』
「シンクロ召喚か…!」
『結構ガチよ!永続罠、女神の加護を発動!このカードが存在している間、私のライフは3000ポイントアップ!』
「やるな、ろじこ!エンシェント・ホーリー・ワイバーンは相手よりライフが高い分だけ攻撃力が上がる!」
「くっ…!」
『エンシェント・ホーリー・ワイバーンでジャックくんのモンスターを攻撃!』



でも、私はいつも助けてくれる京介がこんな風に見下されるのが嫌だ!



「ぐおぉぉぉ…!!」
「!!」
『!?』



ジャックくんがうめき声をあげる。
その足は二歩、後ろに下がる。



「ぐっ、なめた真似を!」
「ろじこ、お前、使えるように…!」
『こ、これが…フィール…!!』







結局、デュエルには負けてしまった。

しかし、私はデュエルでフィールを具現化することができるようになったのだ。



『ジャックくんは…強かった。悔しいけど。』
「フン、当たり前だ!」
『でも、おかげでフィールを使えるようになって、その…その…』
「何だ。」
『あ、あ、あり…』



怪訝そうな顔でこちらを見るジャックくん。



『うわー!ありがとうって言いたいのに言いたくないの!何でだろう!』
「ふん!俺はお前に世話を焼いた覚えはない。礼など言われる筋合いはない!」
『…ふん、どうもありがとう、性格の悪いジャックくん。』
「お前…!」
「まぁまぁ、落ち着けよ二人とも。ろじこもジャックとのデュエルでフィールが使えるようになったんだ。仲良くしろよ。」
「仲良くなどする必要ない!」
「相変わらずだな…」
『はっ!どーせジャックくんは私が京介と仲良くしてるから妬いてるんだ!悪かったわね、私と京介が仲良くて!』
「何だと!!くだらん!!」



なかなか取っ付きにくいジャックくんであったが、これを機に、少し仲良くなれた……気が、した。多分。





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