どうぶつの町
『こっこの、捨てられた犬のような目をした元キング…のような捨て犬!』
「何言ってんだばるこ?」
どうぶつの町
俺たちが今回、あのおかしな石版に飛ばされたのは、ここオルフィーだ。
どうぶつのも…いや、町である。
何の呪いか、町らしい建物や家が並ぶ中に人の気配は全くなく、代わりに動物があてもなくウロウロとしている。
俺たちがただただ戸惑っているとき、ばるこの足元にすり寄ってきたのが、一匹の犬だ。
「きゃんきゃん!」
「なんだ?この犬…ばるこが気に入ったのか?」
『ねー、絶対この犬っころジャックに似てるわー。ジャックはこんな人懐っこくないけど。』
「そうか…?おい、ジャック、ばるこから離れろ!パンツ見えるだろーが!ばるこのパンツ見ていいのは俺だけなんだよっ!
」
「くぅん…」
『(この2人可愛いなー…)』
俺はむかついたので、ジャックに似た犬っころを追い払った。
そうしてから、俺たちは町を見て回り、人がいないか探した。
しかし、誰一人として見つからない。
「おいおい…これじゃぁ何が起こってるのか全くわかんねーぞ。」
『そうだね、町にいるのは犬、馬、豚、猫……あ、蟹。』
「蟹!?」
歩いていると、道に一匹の蟹が藻掻いている。
「何で蟹がいるんだよ!」
『どこから来たんだろ、この遊星。』
「確かにこいつ遊星に似てるな…」
『あ、向こうの池かな?』
ばるこは池を見つけると、遊星を鷲掴みにして持って行き、池に放り投げた。
『元気になるかな!?』
「おい、あの蟹沈んだぞ。」
『・・・』
「海の蟹だったんじゃね?」
『私、なんてことを……』
頭を抱えるばるこに、もしかしたら池の底で楽しく暮らしてるかもしれないぜ?と適当に励ます言葉をかける。
そんなとき、一羽の鳥が俺の肩に止まる。
「おぉっ!?」
『びっくりした!…この鳥珍しいね、羽が黒いよ!』
「クロウみてぇだな。」
『何で京介の肩に止まったんだろうね!すごいね!』
クロウは、キョロキョロと俺とばるこの顔を交互に何度も見た後、どこかへ飛んで行ってしまった。
『あ、いっちゃったね。』
「あぁ。」
『あっ京介!肩にフンされてるよ!!』
「何だと!?あっマジだ!あいつちくしょーー!」
ばるこがハンカチを濡らしてフンを丁寧に取ってくれた。
畜生、俺のジャケットに…!!
結局、町民は一人も見つけられず、俺たちはこの町で何が起こっているのか分からずじまいだ。
「とりあえず宿で寝るか。人もいねぇし、勝手に寝て大丈夫だろ。」
『寝ちゃお寝ちゃおー!』
俺たちは無人の宿屋に入り、ベッドを借りた。
明日この町がどうなっているかは分からないが、とりあえず眠りについた。
そして、夢を見た。
薄暗い洞窟か?
大きな棺がある。
何だこれは?
何かを閉じ込めて封印しているのか…?
ガタガタ…
地震か、洞窟が揺れる。
その揺れで、棺のフタがずれて少しだけ開いた。
「…ふはは、封印は解かれた…」
棺から声が聞こえる。
何だこいつ。
「おのれ…私を封印した白い狼め…」
白い狼…?
「町の人間も動物の姿にしてくれる!!」
そして棺の声は静まり
俺が少しだけ安心すると
俺の耳元で
次はお前たちだ
と。
「うぉぉっ……!!!」
何だよホラーかよ!!
俺は飛び起き、荒い呼吸をする。
この町で何が起こったっていうんだ……!
+continue+
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