灼熱のビッグモアイ
この世界が、モンスターがリアルに生息していたり自分が魔法を使えたりする、なかなかファンキーな世界だっていうことは、もう身を持ってわかっていたが。
私たちの目の前にそびえ立つのは
灼熱のビッグモアイ
『私、今からこれと戦うの…?』
パミラさんに、山の深部の様子を見て来いと言われ、私たちは山の内部を降りて行った。
予想通り、マグマが沸き立ち、身を焼き蒸すような熱気の立ち込める道を、お決まりの『暑い』「脱げば?」『脱がねーよ』というやり取りを交わしながら、私たちはなんとか進むのであった。
そしてやっとの思いで山の最深部にたどり着いたとき、目の前には炎の巨人と呼ばれる小屋ほどの大きさのモアイのような形をしたモンスターがいたのである。
エンゴウの民が次々と火口へ投げ入れていた炎は、この炎の巨人に降り注ぐ。
「愚かな民どもめ…この炎がわたしの力となり、大地を焼き尽くしてくれる。……だと。」
『京介、モンスターの言うことがわかるの!?』
「……っていう気がするだけ。」
『ノリかい!!』
しかし、そんな京介のデタラメな発言もあながち間違っていないらしい。
炎の巨人は、村人によって投げ込まれる炎を浴び、威力を増している雰囲気がした。
「こんなんとまともにやり合って勝てるわけねーだろ!踏みつぶされたらリアルに死ぬぞ!」
『一旦引き上げてパミラさんに相談してみよう!』
私たちはダッシュで山道を駆け上がり、パミラさんの元へ行く。
『はぁ、はぁ…パミラさん!』
「おお、ばるこに鬼柳。どうじゃった、山の中は。」
私たちはパミラさんに炎の巨人のことを話した。
「ふむ…炎を鎮めるのは水じゃ。世界のどこかには邪悪なものを清める水があると聞く。その力なら…」
「んなことならパミラのばあさん、今からばるこがここで立ちションするってよ。」
「『!?!?!?!?』」
『んな、何言ってるの京介!?』
「鬼柳、おぬし頭は大丈夫か?」
「だって俺ら、そんなすごい聖水なんか見たことないぞ?だったらばるこの放尿で満足するしかねえ。ばるこだから、きっとすごい聖水に違いねえ。」
『んなもんで満足させてたまるか!』
・・・すごい聖水?
私は思い出した。
この前、遊星が「ふふ、ばるこ。これをお前にもらって欲しい。このすごい聖水はすごいぞ。なんて言ったって俺の…いや、何でもない。でもすごい聖水なんだ。」って言いながら、わたしに小さな小瓶をくれたんだった。
『これを撒くわ。』
「!ばるこよ、おぬしのその小瓶は…!」
「何だよタイミング良すぎだろ、ばるこ。」
『これは遊星の…いや、何でもない。すごい聖水、らしいわ。』
私は、その遊星のすごい聖水を、火口へ振り撒いた。
キラキラと水滴が光を反射して輝きながら火口へ舞い落ちてゆく。
すると…
「!!おぉ、火口の炎が静まってゆく…!」
『まじか……』
「おお!やったなばるこ!」
先ほどまで激しく沸き立っていたマグマはおさまった。
私やパミラさんが夢で見た、噴火、エンゴウの土地を飲み込むマグマを感じさせない、穏やかな火山に戻ったのである。
エンゴウの村人たちは炎の儀式を終え、先に村に戻ったらしく、私と京介はパミラさんに連れられ村に戻った。
「ばるこ、鬼柳。おぬしたちのおかげでこの村は助かった。村人の代わりにわしから礼を言うよ。」
「へっ、どうってことないぜ。」
『うんうん。お祭りも楽しかったしね。』
「ああ。ご苦労だった。せっかくじゃ、ほむら祭りの続きを楽しんで、ゆっくり休んでくれ。」
「おお!ばるこ、祭りは夜通しやるらしいぜ!満足させてもらおうじゃねえか!」
『ほんとだね!行こう行こう!』
私たちはご馳走や村人の踊りなど、祭りの続きを楽しんだ。
そして、ゆっくり寝ようと、宿屋へ向かい、すぐベッドに横になった。
ちゅんちゅん…
『ふぁぁ、よく寝た………あれ?』
私が目覚めたのは、宿屋のふかふなベッドではなく、アジトの少し土臭いベッドだ。
『ゆ、夢…?』
隣では京介が幸せそうな顔で寝ている。
確かに、冒険をしたのだ。
相変わらず不思議な感覚がするが、とりあえず昼になったら遊星のところへあのすごい聖水のこもを詳しく問い詰めようとおもった。
+continue+
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