混浴温泉のある村
熱い…!助けて…!
山の神様のお怒りだ!!
どうして…!
きゃぁぁぁ!!!
……い…
お……い
「おい!ばるこ!」
『はっ…!!』
「大丈夫か、ばるこ?うなされてたぞ。」
『う、うん…』
炎に包まれる人々の夢を見たのだ。
あまりよくない気分の中、俺のキスで満足な朝にしてやるぜ、と言う京介をかわし、水を飲みに行くためにベッドから起き上がる。
と。
心配そうに私を見る京介が、以前のような石版を小脇に抱えているのを見てしまった。
『わ、私…またあの変な世界に飛ばされるのね…』
「おう!」
混浴温泉のある村
『あっつ……』
村からはそびえ立つ火山が見える。
そのおかげか、この村、エンゴウは熱気に覆われ、サテライトで日陰生活を送っていた私たちには、その暑さと日差しがとても堪える。
しかしこの土地は火山の炎の神によって守られているらしい。
村には温泉が湧いており、村に掲げられた聖なる炎のおかげで魔物も村には近づけないのだ。
「村のヤツから温泉があると聞いたが、こんだけ暑かったら温泉なんて入る気もなくなるな。」
『混浴らしいけどね。』
「よっしゃ行くぜばるこ!どこだ温泉は?おっあの井戸から湯気が立ってるな。ほらボーっとしてんなよばるこ!あぁパンツ?てきとーに温泉で洗って干しとけ干しとけ、この暑さだすぐに乾くだろ。まぁその間ノーパンだが大丈夫だ、いつもの邪魔なパンツがないんだ、俺が満足させてやるぜ、なぁ?」
『混浴にがっつきすぎて引くわ!』
京介に手を引かれしぶしぶ温泉にやってきたのだが。
「男しか入ってねーじゃねえか!!!」
『まぁそうでしょー。なかなか女の子には勇気がないよ、混浴なんか。』
「ちくしょー!おいばるこ!あんま他の男の裸見んな!」
『おっあの人良い筋肉!いやーん!』
「ばかばるこ!温泉に沈めるぞお前!」
あー平和な村だなぁ、と思った。
今夜は炎の神を祀るため、宴を開くらしい。
ほむら祭というそうだ。
こんな穏やかな村に、なぜ私たちが飛ばされたのだろうと思った、その矢先。
「祭を開いてはならん!!」
老いた占い師が村の中心部で、村人に主張している。
しかし、村人たちは何かの間違いだと、占い師の言うことを聞こうとしなかった。
「まぁ確かに、祭をするなって急に言われても、理解できねえだろーな。」
『・・・』
「ばるこ?」
私は今朝見た、炎に包まれる人々の夢を思い出した。
嫌な予感が、するのだ。
占い師は、話を聞かぬ村人たちにガックリと肩を落とし、自分の家に帰っていった。
私たちはその後を追った。
『占い師さん、あの……』
占い師の老婆は、パミラという名前らしい。
パミラさんによると、どうもエンゴウの山の様子がおかしいらしい。
「しかし山に入れるのは、ほむら祭の炎の儀式のときだけじゃ。」
「つまり、それまで俺たちはほむら祭に参加するフリをして、炎の儀式のときに山に忍び込むってことだな!」
「ああ。それまでは祭を楽しんでもいいだろう。」
『やったー!京介、美味しいものいっぱい食べよ!』
「おお!ばるこ、それより温泉行こうぜ!今なら邪魔も入らねーだろ、なぁ満足させてくれよ!」
『やだよエロ京介さいてー!!』
「……鬼柳、ばるこ、お前たち目的を忘れるなよ……?」
パミラさんが釘を刺すように言うので、私たちはハメをはずすこともなく、普通にご馳走を楽しんだ。
「さて、そろそろほむら祭の最大のイベントをしますかな。」
村長の言葉に、村人たちはさらに盛り上がる。
炎の山へ、行くのだ。
私たちも参加してよい、とのことで、村長から火の灯された帽子を頭にかぶる。
火を消さないように、この帽子をかぶり炎の山へ行き、火口へ帽子を投げ入れるのだそうだ。
村人たちについて行き、炎の山に登る。
火口はとても熱い。
村長が帽子を投げ入れるのを真似て、私たちもかぶっていた帽子を脱ぎ、火口へ投げ入れた。
熱い…
夢で見た光景とそっくりの火口の様子に、嫌な予感しかしない。
『・・・』
「ばるこ、大丈夫か?顔色悪いぞ。熱ぃもんな、外出るか?」
『いや、違うの。朝に見た嫌な夢が今とそっくりで…何かやな感じが…』
「ふむ。ばるこのそれは予知夢かもしれんな。やはりこの山で良くないことが起こっておる。」
「パミラのばあさん。」
「鬼柳、ばるこ、火口の下の様子を見て来てくれ。わしはここで村人たちがこの下へ行ってしまわぬか見張っておる。」
『わかった。』
「この下はもっと熱そうだな…くそ、行くか!」
私たちは、山の深部へ続く道を下に降りた。
この山で何が起こっているのか…
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