初めてのボス戦!




とんでもない世界に迷い込んでいたのだ。












初めてのボス戦!












私たちはウッドパルナの村に戻ると、パトリックの家に行った。


「よぉパトリック。緑の宝玉を持ってきたぜ!」
「鬼柳お兄ちゃん!!本当に緑の宝玉を持って来てくれたんだね!早速これをお父さんに…」


パトリックが父親に緑の宝玉をかざすと、淡い光が放たれ、みるみるうちに父親の傷がふさがった。


「うう…」
「お父さん!!」


パトリックの父親は目を覚まし、ベッドから立ち上がる。


「お父さん!!」
「パトリック、わたしはもう大丈夫だ。…こちらの方々は?」
「鬼柳お兄ちゃんとばるこお姉ちゃん。緑の宝玉を持って来てくれたんだよ!」
「おお、あなた方がわたしを…ありがとうございます、わたしはハンク、パトリックの父親です。」


ハンクさんは挨拶もそこそこに、村の女達を助けるため、もう一度東の塔へ向かい魔物を倒しに行くと言う。


「ハンクさん、俺たちも行くぜ!一人じゃキツイだろ?」
「鬼柳さん…!」
「それに、こいつ回復の呪文が使えるんだぜ!」
『覚えたてで恐縮ですが!』
「ばるこさん、それは心強い。このハンク、二度は魔物などにやられたりはしませぬぞ!」



ハンクさんと共に、私たちは東の塔へ向かった。


塔にはチョッキンガーという蟹の形をしたモンスターが待ち構えていた。


「人間とはどこまでも卑怯だ!親方様が留守の間に来るとは!」
『知らないわよ!覚悟しなさい!ボスがいないなら、まずはあんたからよ!』
「ふん、親方様が出るまでもないわ!私がお前たちを切り刻んでやる!まずはお前からだ!」
『え!』
「ばるこ避けろ!」
『ひぃ!』


ブン!とチョッキンガーのはさみが振り下ろされる。
とっさに避けるが、ハラリ、と私の服の裾が地面に落ちた。


『きゃーーーー!』
「避けたか。しかし、いつまでもつかな?」
「おい、どういう意味だ!服がか!布面積がか!ばるこぜってーお前下着は死守しろよ!」
「ちがうわ体力がだ!」
『ひぃぃ私戦いの前線に出る人間じゃないー!』


私は京介とハンクさんの後ろに隠れる。
そうだそうだ、私は回復役に徹しよう。



そんなこんなで、私たちはやっとの思いでチョッキンガーを倒したのだった。


「ぐぬぉぉ、お前たち、これで終わると思うなよ!今に親方様が帰ってきてお前たちを処分してくれる…あっ、親方様!!」



ちょっと待って、このモンスターにだってギリギリ勝てたようなもので、私たちの体力はわずか。
もうボロボロである。


こんなとこにボスなんか来たら全滅でしょぉ!?


『!』


私が後ろ、親方様と呼ばれた方を振り向くと、そこに立っていたのは…


『ま、マチルダさん!?』


マチルダさんは何も言わずにチョッキンガーに歩み寄ると、そのままチョッキンガーに剣を振り下ろした。


「そ、そんな!親方様…!」
「……」


私たちが呆然とマチルダさんを見る中で、彼女は静かに口を開いた。


「そう、私がウッドパルナの女達を攫った魔物のボス…」
「ショックだ。」
『ばか。』
「マチルダ…聞いたことがあるぞ、確か、英雄パルナの妹…」


ハンクさんのつぶやきにマチルダさんは頷く。




昔このウッドパルナが魔物に襲われたとき、一人の若者が立ち上がった。
英雄パルナ、マチルダの兄だった。
パルナは村人たちに先立ち、村人たちの後から応援に駆けつけるという言葉を信じ、単身で魔物の巣食う塔へ向かったが、しかし村人は怖気づき、パルナの後を追う者はいなかった。

マチルダは、兄パルナを裏切り死に追いやったウッドパルナの村人を憎み、魔物と姿を変え復讐したと言う。



「村の女達は闇に閉じ込めています。それを解くカギは、この私の命。」
「くそ、ひでぇ話だな…」
「しかし、村の女達は返してもらう。…マチルダ、それがお前を斬るとしてもだ。」
「…覚悟の上です。」


マチルダさんは、その人間の姿から魔物の姿へと変身する。
ハンクさんは剣を構える。


『ちょっと待って!!』
「…ばるこ、おい!?」


私はとっさにマチルダさんを庇うように、ハンクさんの前に立ち塞がる。


「ばるこさん、何の真似です?」
『私はマチルダさんとは戦えません!』
「しかし、この女を斬らねば私の村は死ぬのです。」
『マチルダさんは見ず知らずの私たちを心配して鉱山に来てくれました。この塔で傷ついたハンクさんを助けたのもマチルダさんです。彼女は魔物に姿を変えたけど、心までは魔物に染まってない…だからきっとマチルダさんは、ハンクさんを自分の兄に、パトリックを自分に重ねて見てた…』


ハンクさんは止めないでください、と言ったが、私はそこをどかなかった。



「ばるこさんと言いましたね…ありがとう、あなたは心の優しい人だわ…」
『え…?』
「ちょっと待て、マチルダさん、あんた何を…!」





魔物と姿を変えたマチルダさんは、その剣を自分の胸に突き刺した。



『マチルダさん……!!!』













「空が、キレイに晴れ渡りましたな…」



マチルダさんが果てたことで、このウッドパルナの島を包んでいた闇が晴れ、光が射す。


「しかし、心までスッキリと晴れた気分にはなれん…」
『ハンクさん…』
「満足できねえ結末だな…まぁ、村に戻ってみようぜ。」
『そうね。』




村に帰ると、攫われていた女達が戻ってきたようで、妻や彼女の無事を喜ぶ男達の姿があった。


『良かった、女の人は無事に村に帰ってこれたのね。』
「ああ、鬼柳さんとばるこさんには何とお礼をしたら良いか。」
「いや、礼には及ばねーよ。それよりハンクさん、俺たち実は違う世界からこっちに迷い込んだんだ。元の場所に帰る方法なんて……いや、知らねーか。」
『そうだった…!私たち、帰らなきゃ!』


ハンクさんは、困った顔をした。
そうだよね、違う世界から来たなんて急に言ったら困るよね。


そこへ、パトリックが走ってやってくる。


「お父さん!!」
「おおパトリック。」
「やったね、お父さん!村の女の人が帰ってきて、空も晴れたね!鬼柳お兄ちゃん、ばるこお姉ちゃんも、ありがとう!」
「おう!」
「あーあ、この空をマチルダにも見せてあげたいなー!元気かなー!」
『…そうだね!マチルダさんもこの空を見てるといいね!』
「うん!そういえば、お父さんたちが村を出た後、マチルダに会ったよ。鬼柳お兄ちゃんとばるこお姉ちゃんに、初めにいた森に言ってみてください、って言ってた。」


初めにいた森、私たちがスライムに襲われたところか。


「行ってしまわれるのですね、鬼柳さん、ばるこさん、お元気で。」
「ああ、ハンクさんも!」
『パトリックも元気でね!』
「うん!」



私たちは挨拶を交わすと、ウッドパルナを後にした。





+continue+




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