女達が攫われた村




私たちが着いた村では、村人たちが自らの手で村を壊していたのである。












女達が攫われた村










『な、なにこの暗い雰囲気…』
「おい、みんな自分で自分の家を壊してるぞ!?」


村人に話を聞くと、ここウッドパルナでは、魔物が村の女達を連れ去り、自らの手で村を壊さなければ女達の命を奪うと言うのだそうだ。
それで村人は魔物に従い、村を壊し続けていると言う。


私たちが村人の話を聞いて周っていると、村の隅に目立たぬ一件の家を見つけた。


『この家だけは壊されずに残ってるみたいだな。』
「怪しいな…よし、入るぜ。」
『え、ちょ、そんな勝手に!!』


止める私を聞かず、京介はドアを開け家の中に入る。


「!」
『ちょっと、おじゃましますくらい言い…!』
「お兄ちゃんたちは…?」


そこには、一人の小さな子どもがいた。
ベッドに横たわる父親を看病している様子だった。


「突然入っちまって悪かったな。俺はチーム・サティスファクションのリーダー、鬼柳京介だ!」
『私はばるこよ。』
「ぼくはパトリック。こっちは今は怪我で寝ているけど、ぼくのお父さん。」
『そう、お父さんの看病をしてるのね。』


パトリックの父親は村を守るため、魔物の住む塔に向かったが、そこで痛手を負い病床に伏せてしまったらしい。


「マチルダがお父さんを助けてくれたんだ!マチルダはとっても強いんだよ!」
「ちなみに美人か?」
「え、う、うん…」
『おい京介何聞いてんのよ。』
「いや、別に?」
『顔がニヤけてんのよ!さいてー!』
「まぁ落ち着けばるこ。ところでパトリック、お前の父さんの怪我の具合はどうなんだ?」
「うん、まだ動けないんだ。緑の宝玉じゃなきゃ治せないんだけど、僕や村の人たちは戦えないから…」
『そう、緑の宝玉ね…』
「パトリック、安心しろ。俺たちが取って来てやる!」
『京介!?』
「本当、お兄ちゃん!」
「ああ。いいよな、ばるこ?こんな子どもが困ってるんだ、放っておけないだろ。」
『そうだけど…私たちも戦えないでしょ…?』
「いや、なんっつーか…いける気がする。」
『まじでっ!』


そういうことで、私たちはカラーストーンと呼ばれる宝玉のある採掘場へ向かうことになった。

村の外は魔物がいるというので、パトリックに勧められ、よろず屋で身仕度を整える。


『ひのきの棒?こんなんで戦うの?』
「お前その棒、卑猥な形だな。」
『卑猥って言うな!』
「おれはこんぼうだ!よし行くぜ!」


採掘場に着くと、そこからは嫌な空気が漂っていた。
いかにも魔物の巣窟となっていそうだ。


「よし…入るぞ!」
『うう、なんでこんなことに…』


採掘場の中に入ると、ナスビの形をしたモンスターが現れる。
パトリックに教えてもらった、これはナスビーラというモンスターらしい。
ナスビからツルのような長い手足が生えている。
そのツルをムチのようにして攻撃してくる。


「痛えっ!このやろう!」
『きゃー!こっちは気持ち悪いの出てきたぁっ!』


リップスというその名の通り唇の発達したモンスターに、私は舐めまわされる。


『ひぁぁぁ!やめ、ちょっ…!』
「エロいな、ばるこ。」
『そんなん言ってないで助けてよ!!!!』


なんとかモンスターをやっつけ、先に進む。


すると、赤や黄色、青に輝くカラーストーンの中に、ひとつだけ緑に光るカラーストーンを見つけた。


「これか、パトリックが言っていたのは。」
『これを持って帰ればいいのね。』


その時、背後で何者かの足音が聞こえる。


「誰だ!?」


私たちが振り向くと、そこにはピンクの鎧に身を包んだ金髪の女の人が立っていた。


『も、もしかしてあなたがマチルダさん!?』
「どうして私の名前を…?確かに私はマチルダです。パトリックからあなた方が採掘場に向かったと聞いて、心配になって来たのですが、無事に緑の宝玉を見つけたようですね。」
「ああ、あとはこいつを持って帰ってパトリックの父親に渡せばいいんだよな!」
「はい。無事で安心しました。村まで送りたいのですが、急ぐ身ですので私はこれで。」
「あ、おい!」


マチルダさんは振り向かずに、どこかへ行ってしまった。


「マチルダさん、やっぱり美人だったな…痛え、殴んな!」
『ふん、ばか!』
「妬くな妬くな、ははは。」
『もう帰る!』
「あ、おい置いていくなよ!」


私が拗ねて先々進むと、また魔物が現れる。


『ひっ…!』


オニムカデというモンスターで、そのトゲトゲの身体で体当たりをされたらかなりダメージを食らうだろう。


「ぴぎー!」
『っ…!』


オニムカデは丸まり、こちらへ体当たりをしてくる。
私はその痛みを想像し、思わず目をつむる。


「ばるこ!!」


ドンっと音がするが、自分の身に痛みは感じない。
恐る恐る目を開けると、私の前に立ちふさがった京介が私の代わりにオニムカデの攻撃を受けていた。


『京介!』
「ばかお前、一人で行くなよ危ねえだろ!」


こんぼうでオニムカデを倒すと、京介は怒った顔でこちらを向く。


『京介、腕から血が…!』
「こんなん痛くねえ。」


左腕を押さえ、苦い顔をする京介から、そのダメージが想像できる。


『ごめ、ごめんなさい…』
「ばるこが無事で良かった。…よし、帰るぞ!」
『あ、歩けるの…?』
「ああ、大丈夫だ。」


大丈夫じゃないよ…!


『京介…!』
「!」


私が京介の腕に手を伸ばすと、私の手から青白い光が放たれる。
すると、京介の左腕の傷が嘘のように治ったのだ。


『な、何これ…!』
「治った…痛くねえ。」


私は、ホイミの呪文を覚えた。




+continue+




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