ロボット兵に狙われた城

てんぷれ




『ねぇねぇ京介。王子様と結婚したら私一生贅沢に暮らせるかな!入隊試験がんばろーねっ!!』
「…別に兵士になっても王子と結婚できねーぞ。」
『怒ったー!やだ、冗談だよ!』
「ばか!お前なんか兵士長にボコボコにされろ!」













ロボット兵に狙われた城










私たちが今回旅をしているのは、フォロッド城。

メカニックに長けた地域で、城や近くの街には掃除ロボットが一家に一台あるなど、ここの人々は機械を使いこなし生活している。



しかし、そんな城と街が、何らかの脅威に狙われている。



街や城の外には、何者かによって放たれたからくり兵がはびこっており、街や城を襲うのだとか。

何人もの命が奪われ、建物は壊されている。

人々は、からくり兵の恐怖に怯えながら生活をしている。



そんな中、フォロッド城の王子と兵士長が考えたのは、傭兵を募り、からくり兵を叩くということであった。

そこで、今回私たちはこの傭兵に申し出、からくり兵討伐に参加することにした。



…からくり兵みたいな戦闘のために作り出された機械。
絶対に怖いけど、この問題を解決しなきゃ元の世界に戻れないのだ。



やるしか、ない…よなぁ。



「よし、俺たちの番だぜ。」
『う、うん…!』



私たちが兵士詰め所に行くと、トラッド兵士長が待っていた。
即戦力が必要なため、試験官となる兵士と剣を交え、互角に戦うことができれば傭兵として入隊できるらしい。



『剣か…苦手だな。』



正直、私は剣で戦うことは苦手だ。

そりゃ、サテライトで生きていたら私だってリアルファイトをすることだってあるが、剣みたいなあんな鋭利なものを振り回して戦うなんて、ちょっと物騒だわ…



「トラッド兵士長。俺の隣にいるこいつ…ばるこには、剣は握らせたくねぇ。だが、こいつは呪文が得意だから絶対に使えると思う。だから、俺がこの兵士と互角に戦えたら、俺と一緒にこいつも傭兵として入れて欲しい。」
「そうか、鬼柳。いいだろう。からくり兵を倒すには、力だけでは敵わぬこともあるだろうから、呪文が使える者は必要だ。鬼柳よ、お前が入隊試験に合格すれば、ばるこも傭兵として雇おう。」
『兵士長…!あ、ありがとうございます。』
「っしゃ、やるぜ!」
『京介も…私のこと考えてくれて、ありがとう。』
「おうよ!まぁ見てろ、惚れ直させてやるぜ!」



詰め所から出て、城へ続く道の真ん中で、鬼柳と兵士が向き合う。



私は、ごくり、と生唾を飲み込む。


兵士長の、「始め!」の合図でお互いは一斉に相手に剣を振りかざし、キンッと刃の交わる音がした。



『…っ!!』



人間同士の剣の交え合いは、鳥肌が立つ。
少しでも隙を見せれば、容赦無く切りつけられるのだ。



助けたい…もし、京介が切られたら…!!



私は京介を助けたいと、呪文を唱えようと震える体を両手で押さえつけ、歯を食いしばって京介を見つめる。



『京介…』
「心配か?」
『へ、兵士長。』
「ばるこよ、お前たちは互いに助け合って来たんだろう。そして今も、助けてやりたいと思っているのではないか?」
『は、はい。でも、私が手を出しちゃいけない…』
「不安な気持ちもわかるが、ふむ、しかし鬼柳は筋が良い。」
『あ…!』



ザクッ



私の足元近くの地面に、はじかれた剣が突き刺さる。



この剣は京介のではない。



「勝負あったようだな。」
『京介…!』



私は安堵と歓喜の入り混じった気持ちで京介の方をみる。



「くっ、見事だ鬼柳。貴様、私を下すとはいい腕をしているな。」
「へへっ、それはどうも。」



京介の相手をした兵士は立ち上がると、地面に刺さった剣を抜き、鞘に収めた。

そして、私たちはトラッド兵士長の元につき、傭兵として雇われることが決まった。





「さて、早速だが、今夜は作戦会議を行う。フォロッド城も、近くのフォーリッシュの街も、兵士や町民の疲れはピーク。一刻も早く、からくり兵を退治してしまいたいのだ。」
「よっしゃ、早いとこやってやろーぜ!」
『うん、みんなが諦めてしまう前に、からくり兵を討伐しなきゃね!』
「それまで時間がある。傭兵として国がお前たちを雇うのだ。フォロッド王へ挨拶へ行くがよい。」
「確かに、まだ王には会ってなかったな。」
「ああ、若いがしっかりした方だ。」
『わ、若い王様…!!!そうか、この国には王子様はいないけど王様が若い人なのね……うん、行くわよ、京介。』
「ばるこ、お前急に目つき変わったな。」
『あ、でも京介入隊試験で疲れてるでしょ?休んでていいよ、私が代表して行くわ。』
「ばかお前、下心がバレてんだよ!」
『な、なによ!』
「俺が代表して行く!もうお前来るな!」
『やだー!私もイケメンに会いたい!』
「いつも隣にいんだろ!?」
『京介ばっかりじゃ飽きるー!』
「何だとてめー!」





結局二人で王様に会いに行くことにした。

兵士長の言うとおり、若くて聡明な王様だった。



城から兵士詰所への帰り道、京介がずっと不機嫌そうにムスっとしていたので、多分思った以上に王様がイケメンだったのだろう。



『きょーすけ?』
「あん?何だよ。」



なんて単純な。



『今日一番かっこよかったのは、王様より、剣を握ってた京介だね!お疲れ様!』



京介の手を握ってそう言うと、京介はちょっと驚いた顔をするが、機嫌を直したように少し笑った。



「まあな。」
『うん!』
「っくく、だって俺が兵士と戦ってる時のばるこの顔がよ、もうすんげー泣きそうなわけよ!」
『ちょ、だってあれは…!』
「もう俺が怪我するわけにはいかねぇな。泣き虫のばるこのためにも。」
『ば、ばか…!京介が負けそうだったからでしょ!』
「負けねぇよ!この世界では、お前を守れるのは俺しかしないんだからな!」



繋いだ手を少し強引に引っ張る京介。


私はその後を、おとなしくついて行く。





+continue+





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