おいおい、俺はNTR属性なんかないぞ?
『や、やぁぁ…っ!』
「ばるこ!!」
見つけたときには、ばるこはうっすら涙を浮かべ、やらしく笑う図体のでかいモンスターに尻尾を握られ、地面に伏していた。
おいおい、俺はNTR属性なんかないぞ?
東の山に向かったものの、山の中は曲がりくねった道が続き、それが分岐しているものだから、かなりややこしく、迷路みたいになっていた。
「こんな道、迷ったら帰れねえぞ。だいたい何でジャックたちは町に残ってぬくぬくしてんだ?遊星は蟹だからともかく、ジャックは犬だしクロウは鳥だ、ちょっとでも戦力にならねーか?ったくよぉ…ばるこはどう思う?なぁおい?返事しろよばるこ……って、あれ?」
隣を見ても後ろを振り返っても、ばるこがいねぇ。
おい、あいつどこいった。
え?迷った?あいつ迷った?
それとも何だ、迷ったのは俺の方ってか?
ちょっと待てよ……
どうするんだよこれ、はぐれちまった。
最悪、ばるこはリレミトとかいう洞窟とか建物から脱出できる呪文を唱えることができるが、俺はそんなん知らねーぞ?
「進むしかねえか…!」
腹を括って、道を進む。
やっと頂上近くか、というところで、かすかにばるこの声が聞こえた。
『やっ、やだぁ…!やめてぇっ!』
ばるこの嫌がる声だ。
『いや、離して!京介ぇ、助けて京介…っ!!』
俺は声のする方へ駆け出した。
あいつ、危険な目に……!!
山道の坂を登り切ると、冒頭のように、ばることモンスターを見つけた。
「ばるこ!!」
『きょ、京介!!』
涙目でばるこは俺を見る。
そして、俺はモンスターを睨んだ。
「なんだお前は?」
『京介ぇ〜〜〜!京介とはぐれて道に迷ったと思ったら、ここのボスに捕まったの…!たぶんこいつが動物の姿に変えたワルモノ!』
「てめぇ…よくもばるこの尻尾を!そこは性感帯だぞ!俺に返せ!」
『そ、そういう問題!?』
「断る。良い獲物を見つけたのにそうやすやすと渡しはしない。」
モンスターが笑みを浮かべて握っていたばるこの尻尾を、さらにぎゅっと締め付ける。
『っ…!』
ばるこは顔を歪ませる。
声を出さないように耐えている。
俺はこみ上げる怒りを感じた。
「お前、許さねぇぜ!」
「我が名はデス・アミーゴ。白い狼…そんな不完全な姿の狼など潰してくれる!」
デス・アミーゴはその体の周りに浮かぶ球を投げつけて攻撃する。
「うぉ、危ねぇ!」
投げられた球を瞬時に避ける。
お?なんだ俺?
いつもより体が軽いっつーか動きが速いっつーか…これが狼の力か。
『京介!スカラ!』
デス・アミーゴから解放されたばるこが、すぐさま俺に守備力を上げる呪文を唱える。
おかげで、たまにかする球も痛くねぇ。
「狼の爪を食らえー!」
「ぐわぁぁ…!!」
白い狼の力か、俺の手…もはや前足の爪に光が宿る。
それで斬りつけると、デス・アミーゴは吸い込まれるように棺に戻る。
『もう二度と出てくんなー!』
ばるこが棺の蓋を閉める。
「おぉ…やったか?」
『封印できた、みたい!』
「よっしゃ!これで町も元通りだな!」
『よかったー!じゃぁ私たちも元の姿に戻れるね!』
は!
喜ぶばるこの隣で、俺は焦る。
悪を封印できたということは、あのデス・アミーゴにかけられた呪いは解ける。
つまり、せっかくばるこに生えた猫の耳と尻尾も元通りだ。
「ばるこ!時間がない!」
『え、な、何!?』
俺は棺の上にばるこを押し倒す。
「猫耳と尻尾のあるうちに、一発満足しようぜ!!」
『や、やだーーーーーーー!』
俺とばるこが町に戻る頃には、俺もばるこも、そして町の人間たちも動物の姿から元に戻っていた。
「ようこそ、旅の方!ここはオルフィー。ちょっと前まで町のみんなが動物の姿にされていたのに、元に戻ったんです!あぁ、こんな嬉しいことって…!」
町の誰に話しかけても、嬉しそうにしている。
しかし、どんなに探しても遊星やジャック、クロウの姿が見えない。
あいつらのことだ、蟹や犬、鳥の姿から人間の姿に戻ったら、そのまんま、あいつらみたいな感じなんだろうと思ったが。
『いないね、遊星たち。』
「あぁ。」
ばるこも探していたようだが、見当たらない。
幻覚、なわけねぇよなー。
諦めて町を出かけたとき。
「くぅ〜ん」
町の外に、蟹を乗せ、隣に鳥を飛ばせている犬を見つけた。
「え、お、お前ら…!」
『う、うそ!』
「わん!わん!」
犬は俺の足元に何かを残すと、そのまま蟹と鳥を連れてどこかへ走って行った。
『元は人間の姿じゃなかった…まんま動物だったってこと?』
「ジャック、あいつ何を残して…って、これまた石版じゃねえか!」
謎を残し、この世界の旅は終わった。
次はどこへ行くのか……俺は石版を見つめた。
+continue+
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