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「よく寝れた?」
…あー、まあ。けどいい目覚めかって言うと自信ねーかも。
「いきなり乗っかってくるからびっくりしたッスよ。添い寝希望なら先に言ってくれりゃいいのに」
嫌味かよ、起きてすぐに言うことかよ。…って八つ当たりっぽく思ったのは、動揺してんのをごまかすためだった。状況としては昼寝して目が覚めたとこ。それは別によくて問題は、オレがこいつに膝枕されてるってことで。
どうしてこうなった?自慢じゃねーけどオレ昼寝のプロだから、ぱっと寝てぱっと起きるなんて余裕だし、ベッドとかテントとかなくてもいいし。適当なとこに座って目閉じてってだけで十分。起きて状況理解できないなんてこともあんまない、…はずなのに。
こんな体勢になった覚えなんてなかった。休憩すんぞってことになって、横になるような場所でもねーから岩陰に腰掛けることにして。隣にこいつが、ティーダがいたのはたしかだ。そっちはそっちで好きにすればいいって思ってた。そのつもりが無意識のうちに、オレから寄りかかったとか?まさか。こいつが勝手に引き寄せてきたんだろ。いやそれはそれでメリットねーけど。
なんかの拍子に寄っかかってそのまま体勢崩して、たしかにそう考えんのが一番自然な気もする。…やっぱ悪いのはオレか。そうだとして何で膝枕なんだよ寝てるときのオレ。かてーしからかわれるし、こっち見下ろしてにやにやされるし。ティーダ、気づいたときに起こさないおまえだって悪いだろ。
こっち見んなよ。…そこまで思ってから、なんか違うことに気づいた。ティーダはにやついてるわけじゃない。オレも見られんのが嫌だって思ってない。前髪触られて、でも振り払う気は起きない、このままでいてやってもいいか…とか。
変だ。何がってこいつが。チャラくてやかましくて、…ってそれで全部だろ普通、なのに。
こんな静かでいることもある。意外だった。しゃべらない、笑わない。オレの前髪をいじくる指先だけをゆっくり動かして、擦れる音をたててる、あとは呼吸音だけ。目なんか特に落ち着いてる。見られて逆に安心してる自分がいる。引き込まれそうになるくらい深い、透明に青い。
…寝起きだからって妙なこと考えすぎだろって感じだけど、あんま気にならなかった。ゆっくり息してたらまた力が抜けてってるっぽいんだよな。ティーダの目に眠そうな顔したオレが写ってて余計に、これは寝れる。寝る。
「ノクト?」
嫌なら嫌でそれなりの反応すりゃいいのに、ティーダは小さく呼びかけてくるだけだった。まだ寝るのかよ。そうだよ。
悪いけど枕続けてもらうわ。ついでにちょっとしたことを思いついてオレは寝返りうった。腹んとこに顔埋めるみたいにして落ち着く、添い寝希望らしいし別にいいよな?…くすぐったいとか言われたような気がするけど知らねー、その先どうなったかは覚えてない。

2020/6

 



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