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ジェクティ


ooリルム断章関連

「何か悩みでもあるのか?」
飛空挺の回廊でついさっき、顔を合わせたばかりの相手にする質問じゃなかったかもしれない。深刻な言い方にならないようオレなりに気を使ったつもりなんだが…。ティーダはこちらにちらっと視線を寄越してきたきり、唇を尖らせてそっぽを向いてしまった。放っといてくれといったところ、…けれどそんな風にされては、余計に気になるというものだ。
大体何か言いたげな顔をしていたのはそっちだろう。深刻そうな雰囲気で、それをごまかそうとして笑われたら、気にするなというほうが無理な話じゃないか。
なあ、オレでよかったら相談に乗るよ。
「うん…あのさあ、フリオ」
ティーダは後頭部を手のひらでかきながら、困ったように言う。
思ったより由々しい事態のようだ。オレは何を相談されても、親身に答えるつもりで。
「オレ、オヤジとベタベタなんかしてないよなあ?」
ん?…ん?
あまりに予想外の方向からの問いかけだったから、一瞬思考が止まってしまった。
「なあ!?」
そんなオレの様子をどう勘違いしたのか、ティーダが問い詰めるように迫ってくる。と、とりあえず落ち着いてくれ。オレはまだ質問の意味すら理解できてないんだ、ベタベタってどういうわけなんだ?
だから、と切羽詰まった様子でまくしたてるティーダ。
「リルムって子いるだろ?この前仲間になったばっかの」
「ああ」
「あの子に言われたんだ。オレとオヤジって仲良し親子だよねって。…仲間になったばっかだぞ?なのにそんなこと言われるぐらいオレ、オヤジとベタベタしてたのかよって、ああそれにラグナまで、恥ずかしがらなくていいぞとか言ってきてさ」
むちゃくちゃだろ。そりゃ一緒に探索することはあるけどたまにだし、むしろあんまり同じグループになんないようにしてるぐらいだし。組み手はよくやるけどあんなんただの練習試合だって、なのにこんなこと言われる筋合いある!?
「オレそんなにオヤジとベタベタしてるように見えんのかな!?」
お、おう。ティーダの必死な形相に気圧されて、いつの間にか数歩後ろに下がっていたようだ。壁際に追い詰められている。わかった、頼むから落ち着いてくれ。事情は大体わかったから。
…と言っても、そんな泣きそうになるほどのことだろうか、というのがオレの率直な感想だった。仲が良いのはいいことじゃないか。何かいけないことがあるのか?だが親身に答えようと考えていた手前、それをそのまま伝えるのはためらわれて。
そうだな…二人の仲の良さはたしかに、仲間内での共通の見解だと思う。ティーダの言うとおり、積極的に行動を共にしてるわけじゃない、けれど。
「ベタベタしてはないな」
「…だ、だよな、そうだよな!」
「ただお互いをすごく思い合ってるというのは、オレでもわかるよ」
「!?」
「ジェクトは、口を開けばおまえのことばかり話してるからな」
「はあ!?」
よほど自慢の息子らしい、と誰かが言っていたのを聞いたことがあって、同意したことがある。あのガキがなんか迷惑かけてねえか、それがジェクトの決まり文句で、嫌味な言い方はその実、息子の様子を少しでも知りたいという彼なりの親心なんだろう。その日あったことなんかを報告すると、すごく嬉しそうにしてくれるんだ。
「な…っ……なあ…っ」
それにおまえだって…。
言いかけたところでようやく、ティーダがわなわなと震えてることに気づいた。
「あのクソオヤジ!!」
そう吐き捨てるや否や、目の前からティーダの姿が忽然と消えるので、あまりの素早さにオレは呆気にとられてしまった。な、何だ?オレは何かまずいことを言ってしまったのか…?
ティーダが行ってしまったので、確かめようがない。
それに先ほど言いかけたこと…おまえだってジェクトの話ばかりしてるじゃないか、という指摘を伝え損ねたのも、いいことなのか悪いことなのか、オレには判断つかなかった。

ちなみに。飛び出していった先でティーダは無事、ジェクトを見つけることができたらしい。
ただそこにはスノウとセラも一緒にいたんだそうだ。二人に、「今ちょうどティーダの話をしてたとこ」などと言われて、ティーダが暴れたとか、暴れなかったとか…まあ又聞きの話だから、詳しいことはわからないんだが。

2019/6

 



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