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ロクティダ?


※朗読劇ネタ

イミテーションが明らかに増えている。これもあの女神の言うところの異変の一つか?もとよりのんびりするつもりはないが、進むたびにこれでは探索も何もあったものじゃなく、苛立ちばかりが募る。
「消えろ!」
振り下ろした武器にあっけなく砕け散るイミテーション。これだけ脆いのに無視しては進めないというのだから、厄介にも程がある。
息つく間もなく辺りを見渡せば、他のやつらも苦戦している様子はない。圧倒的パワーでねじ伏せるクラウドに、ちょこまかと駆け回っているティーダ。あと一人は…あそこか。二体のイミテーションの死角に回り込むように立ち回る、ジョン。
加勢するとすればここだ。オレはわざと直線的な動きで距離を詰めた。相手の注意を引きつけ、内一体に攻撃をたたき込む、もう一体には不意を突いたジョンの一撃が突き刺さる。おそらくティーダが取り逃がしたんだろう最後の一体が、わざわざ向かってきたのを切り伏せて終了。
早速この辺りの調査を、…と思ったところでクラウドが、すかさず口を開いた。
「いったん休憩にしよう」
言葉尻の割に有無を言わせない口調で。休憩?そんなもの必要ない。
「ああ、そうするか」
「さんせーい!」
てっきり他のやつらも反対するかと思いきや、ティーダとジョンが口々に言うのに動揺させられる。何でだ。やっと邪魔者を掃除し終わったところ、さっさと済ませて次に向かうべきだ。時間がもったいない。
「まあまあ、そう気張るなよスコール」
「そうッスよ。バテても知らないぞ?さっきから飛ばしすぎだっての」
はあ!?ま、まだ何も言ってないだろ、しかも飛ばしすぎって、誰がだ。
反論しそうになったが、面倒が嫌で無視を決め込むことにした。ティーダが小馬鹿にしたような顔でにやつくのも、ジョンとクラウドが同意するような素振りを見せるのも癪だったが。
「助けてくれるのはありがたいけどよ、オレだってそこそこやれるんだぜ?さっきのだってオレ一人で…」
「ジョン、それは言っちゃダメッス」
こいつらは何を勝手に。呆れ返るオレをよそに、ティーダがロックの耳元へ口を寄せた。スコール、さっきのこと気にしてるんだと思う。だからジョンのこと守ろうとしてるんだ。ああわかってる、いいやつだよな。…お、おまえら、それで内緒話のつもりかわざとらしい。
「だろ。いいやつなんスよ、無愛想だけど」
「たしかに」
「しかもものすげー頑固だし」
これ見よがしに笑い合う二人、悔しいがこめかみがけいれんするのを抑えられない。落ち着けオレ。苛立ってはあいつらの思うつぼだ…。
「まあでも、スコールは正しいと思うぜ」
突然ジョンが話題を振ってきた。思わず睨み返してしまう。
「オレがおまえの立場でも同じく警戒したはずだ。連れがこれじゃあ、なおさらな」
ジョンは指さしたりはしないが、誰のことを言っているのかは明白だった。オレは肯定も否定もしない。
というより、こいつは何が言いたい?真意を見極めたほうがいい気がして。
「つれ?何のこと?」
「ああ、こっちの話。…ん?ティーダ、目んとこゴミついてるぞ」
あまりに自然な流れだった。
「え、マジ。…このへん?」
「いや、そっちじゃない」
言われて目の辺りをこするティーダ。その顔を覗き込むジョン。
「こう?」
「あー…ダメだな。とってやるよ、目瞑れ」
「ん」
ティーダは従順だった。言われた通り目を閉じ、身をゆだねる。
唖然とした。…無防備どころの騒ぎじゃない。そんな格好、喉をかき切られたとしても文句は言えない。見ているだけのオレがなぜか危険を感じて、落ち着かなくさせられるほど。
ジョンもジョンだ。うやうやしくあごを持ち上げるなんて、まるで…。
実際にはあたかもそこにゴミがついてるというふうに、睫毛の辺りを数回払っただけだったが。
「とれたぜ」
「サンキュー」
オレは少しの間、どうすればいいかわからず固まっていた。クラウドも同じような状態でいたようだ。
「…いくらなんでも、なあ」
ジョンが呟く。まあ、わざとなのはわかってるから、この男を信用すべきではなかった…とまでは言わない、が。
「なになに?」
妙な空気になったことだけは察したらしい、ティーダがのんきに聞いてくるのには、思いきりため息をついてしまった。殴りたい衝動を抑えてるだけ、マシだと思いたい。

2019/4

 



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