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「こら、ティーダ!何だそのだらしない格好は!」
まーたはじまった。一日に一回、ひどいときは何回もあるフリオニールのいつものやつ。おまえはおかんかよ。心の中でツッコミ入れるお決まりのパターンやって、オレは盛大にため息ついた。
まったく、部屋に入ってきたとたんこれだもんな。別にいいじゃん。だらしない格好ってただベッドにうつ伏せで寝てるだけだ、何が気に入らないんだよ。しかもどうせそれだけじゃないんだろ。
「服も脱ぎ捨てっぱなしじゃないか!机の上も汚いぞ、ちゃんと片づけてから…」
ほらな、やっぱり。一つや二つじゃ終わんないとこがフリオのすごいとこ。こんなんいちいち相手にしてらんないって。
「ちゃんと聞いてるのか?」
「聞いてるッスよー」
まあ、相手にしなかったらしなかったでめんどくさいことになるのはわかってるから、適当に返事はするけど。リラックスタイム邪魔されたいらいら、隠さないで起き上がったら、フリオが仁王立ちしてて笑いそうになった。これも、めんどくさいことになるから我慢。
「んで、何だっけ?」
「おまえ、やっぱり聞いてなかったんじゃないか」
「あ、いやいや聞いてたって。片づけだろ。後でやるよ」
話は終わり、オレはだらだらしてうとうとする、気持ちいーのの続き。
「ティーダ…」
わかったよそんな怖い顔すんなっての、…って一瞬言うこと聞きそうになった。危ない危ない。言いなりなんてしゃくだ。
そうだ!
「じゃあフリオがちゅうしてくれたらやるッス」
いいこと思いついた、なんてそれほどじゃない、本当ちょっとした思いつきだ。えらそうにしてるからからかってやろう、ってほうがでかいかも。
「は!?お、おおおまえ、何を言って」
そしたら効果テキメン、オレは顔を真っ赤にするフリオに我慢しきれなくて吹き出す。はは、そうだよなー、意外でも何でもなしにフリオってこういうやつだ。だからって慌てすぎ、冗談だって。
冗談じゃなくてもいいけど。
「ほっぺとかじゃないぞ。ちゃんと唇にしてくんなきゃだめだかんな」
さあどうする?オレはわざわざ唇指さしながら、目までつむる念入りな体勢をとる。もちろん勝算ありの挑発だ。うまい手思いついちゃったな、これからも使ってこうなんて、考える余裕まであった。
近づいてきてかがむ気配がしたのには、正直びっくりさせられた。片目だけ開けてみる。目の前にフリオの顔。真っ赤だけどそこそこ真剣で…お?まさかしちゃうのか?のばらのくせに。
もちろん言い出しっぺがビビるなんてダサいにも程があるからな。オレはやるならやってみろって気持ち、もっかい目閉じて待機する。
……。
…ふーんだ、やっぱできないんじゃ…。
ガツン!
「っ!!」
「いっ……」
はあ!?
「でええ!!」
こいつ、ふざけんな!
よりによって歯ぶつけるとか!何すんだよマジ、油断してたから余計痛いんスけど!しかも勢いすごくなかったか?もしかしなくても当て逃げするつもりだったんだろ、なんてやつだ…!うー、ずきずきする。血出たんじゃない?出てないか、けど痛い。
フリオも痛かったんだろ。口押さえてぷるぷるしてるとかさ、おまえ…。
「何すんだよ」
「…すまない」
「謝って済む問題じゃねーよ。…あーあ、もうやだ。さっきのなし。失格!」
「ま、待ってくれ」
うつ伏せに戻ろうとしてたとこ、フリオが引っ張ってきた。無理な体勢にさせられて、それで。…まあ。歯とか首とか痛くなかったら、最上級にやさしいキスって言えなくもないかも。ちょっとだけ、こういうのもできるんだって感心した。
「どうだ?」
だからって調子に乗るなよ。その顔なんかむかつくんだよ。
「痛いのなくなってないから、やだ」
フリオに向き直りながら言う。…あーでも違うぞ、今の、痛いのなくなってそしたら、考えてやってもいいって意味だから。
そこんとこ、勘違いすんなよな。

2018/12

 



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