髪は一つにまとめあげられ、更には念入りに頭巾をしている。
料理に向き合う御峯は、もしかすれば戦場にいる時よりもずっと真剣そうだ。
燭台切光忠は隣で味にこだわり続ける御峯に苦笑してから大皿に自らが作った野菜炒めを盛った。

先日、この本丸に顕現された燭台切は元主の影響でか料理に興味があり、料理を習いたいと本丸の主である群青に相談した。
すると、御峯ちゃんに料理を教わったらどう?丁度食事係を増やしたいと考えていたんだよな。と閃き顔で勧められた。
……断られるんだろうなぁ……と思いつつ、駄目元で頼んだところ、群青に言われていたのか気が向いたのかあっさりと承諾し、今の状況となっている。

「燭台切、手が止まっているけれど、私になにか聞きたいことでも?」
「あ、ううん、なんでもないよ。野菜炒め出来たんだけど、持っていってもいいかな」
「いいよ。箸入れもついでに持っていって」

箸入れとは、この本丸に顕現している刀剣たちそれぞれの箸が入っている容器のことである。
順当に刀剣たちを鍛刀し、戦場で拾った刀剣たちを顕現させた本丸は大所帯となり、何もかもの数が多くなった。
必需品も、衣装や防具も、部屋もとにかく増えた為、一時期ぼくのお菓子を勝手に食べたやら、どれを誰が使用したのだったかというトラブルが度々起こるようになった。
その様々な対策が主である群青、御峯に薬研などの古参によって練られたのが記憶に新しい。

味に納得がいったのだろう、頷いた御峯はご機嫌な様子で、それを皿に盛っていく。
前にも思ったが、御峯という刀剣は、主に対して人のような態度で振る舞い、人のような感情を露わにする。
普段の御峯は無機質で、平淡だ。
子どもの容姿をした刀剣には、それなりに感情を露わにするが、大人の容姿をした刀剣には少しも見せたりしない。
容姿が端麗であるのに感情をあまり見せないのは、もったないと燭台切は思う。
時々浮かべる微かな微笑みよりも、主に向けるあどけない少女のような微笑みの方が、魅力的だというのに。

燭台切は箸入れと野菜炒めが盛られた大皿を持ち、皿の枚数を数える御峯に背を向ける。
おそらく燭台切が居間に行けば、短刀や脇差たちが運ぶ手伝いをするために動くだろう。
そして御峯は、手伝いにきた刀剣を褒めるように少しだけ微笑むのだ。
それが燭台切は、僅かに羨ましかった。
何故ならば、御峯は燭台切へ一度も微笑んだことがなかったからである。



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