「よろしく、薬研藤四郎。俺は審神者の群青。それでこっちが初期刀の御峯勝義、仲良くしてね、えーこれから共に頑張っていこう」
「どうぞよろしくお願いします」
「…おう、よろしくな、大将」

まさか、ううん?女か?薬研藤四郎は動揺を表情に出さないよう努めながら、差し出された審神者の手をとった。


御峯勝義という刀は、どこからどう見ても女だった。
女装している訳ではなく、正真正銘の女である。線が細い、年頃の娘のような姿をしていた。
事前知識で刀剣には男士しか存在しないと聞いていた薬研は、御峯に戸惑いを感じずにはいられなかった。
しかし、いくら女の身であっても、御峯は刀でしかなかった。
短刀の薬研より敵を押し込め、深く損傷させ、破壊することが出来た。刀装もあちらの方が多く装備可能である。
それらを駆使し、容赦も慈悲も感じさせない戦い方を、御峯はいつも戦場で展開する。まるで男のように、敵の前に立つ。
薬研にとって「女」とは、守るべき者だ。おそらく現存していた時代の常識が、当たり前に薬研の思考の核としてあるのだろう。
「女」とは子を生し家を守り、男の帰りを待つ。薬研にとっては、そうだった。
だから御峯が戦場に立つことを良しとしなかった。が、そんな御峯の雄々しい姿を目の当たりにしてからは、もう何も口出しするまいと薬研は決めていた。
共に生きる主を守るとも、薬研は決めた。
共に戦う仲間とも、認めた。

「薬研、どうしたの?」
「いや、なんでもねぇよ、御峯」
「そう?もうすぐ昼ご飯だから、そろそろ畑から戻って来てね」
「お、今日はなんだ?」
「炒飯。炒めた白米に味付けたもの、かな」

畑仕事から野菜を収穫して帰ってきた薬研の元に、割烹着を着た御峯がやってきた。
どうやらまた食事を用意してくれるようだ。
薬研が来たときからずっと、本丸の食事は御峯が作っていた。
主も、まぁ手伝っているし、薬研も手伝っているが、ほぼ御峯の手が作られる。
美味しいと思うが、御峯は満足していないらしく、日々台所で精進しているとのこと。

「…ちゃあはん」
「チャーハンね、ちゃんと手を洗ってから来るんだよ」

料理名を呟けば、正しい発音で訂正される。
御峯が薬研の頭を撫で、台所へと帰って行った。
薬研はきょとんと後ろ姿を見送り、完全に姿が見えなくなった頃、我を取り戻す。
それから土で汚れた手で、撫でられた所にそっと触れた。
容赦も慈悲もないが、御峯には子どもを愛でる心はあるようだ。


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