ぼう、とテレビでやっている映画を観ている途中に、キャスターが静かに帰ってきた。

「おかえりー」
「只今帰りました」

いつも通りに微笑むキャスターの頬に、水滴がついていることに私は気付く。

「雨、降ってた?」
「よくわかりましたね。帰ってくる道中に降り出したんですよ。念の為に傘を持っていって正解でした」
「頬についてるから」

笑いながら放った言葉は、キャスターがぱっと頬に触れた行為で受け止められたと知る。

「……何を観ているんですか?」
「さあ、分かんない。チャンネル回していたらやってた」

で、暇だったから、成り行きで観ている。
座っていたソファの隣にキャスターが腰を下ろす。ソファがキャスターの重さで軋む。
二人並んで知らないタイトルの映画を観る。コメディラブロマンスだと思われる映画は、コメディらしく場面がくるくる変わる。
私はもう映画よりも、隣のキャスターが発する熱に意識がいっている。それなりに興味が出ていたはずなのに、全然集中出来ていない。余計に話の内容が分からなくなる。何となく掴めたような気がしていたのに。
ちらりとキャスターの方を盗み見る。キャスターは静かに凪いだ瞳で、慌ただしく変わる映像を眺めている。私はキャスターの横顔を見ながら口を開いた。

「ご飯たべる?」
「あ、はい。頂きます」

そういえば、キャスターは晩御飯を食べずに出かけていたのだった。思い出したので、ご飯の支度をするためにテレビを消す。コメディラブロマンスは、私たちの前から消えていった。


2020.11.10

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