私と士郎は家族、らしい。
目が覚めると知らない部屋で寝かされていて、私に気が付いた士郎が大慌てで私のすぐ傍に来たのが、まず最初だ。
何も覚えていない。故に知らない他人である士郎に、素っ気ない態度を取ったことで事態が発覚した。記憶のない私に対して戸惑う士郎は、それでも私について今の状況について言葉を選びつつ説明し始めた。
どうやら私はトラブルに巻き込まれて、受け身をとることなく倒れた。記憶がないのは、受け身をとっていなかったせいで頭をぶつけたからじゃないかと結論付けられた。
そんな中、私が士郎との関係について尋ねてみたのだ。そして、それまで歯切れの悪かった士郎が、唯一はっきりとした口調で言い切ったのだ。「俺と名前は家族だ」と。
それを私は信じている。
何の根拠のないその言葉に、私は救いを見出したのだ。士郎は悪い人には見えなかったし、それに記憶がないのだから、居場所がわからない私に行く所はここしかない。だから、こうしてここにいる。士郎とこの広い屋敷に住んでいるのだ。


2020.11.02

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