蕎麦を啜るセイバーは、先程苛烈な戦闘を行なったとは思えないくらいに落ち着いていて、私は夢でも見ていたのかと自分を疑っている。しかし、いま私が感じている疲労感は魔力を奪われた証である、故にあの戦闘は夢じゃないのだ。
深夜でもやっている店で変わり種の蕎麦を選んだセイバーと、深夜だからとサラダを頼んだ私は黙々とお互いのペースで食べ進めていく。
じ、と見ていた私の視線に気付いたのか、セイバーが蕎麦の方から私へ注目を移す。

「ん?なに?マスターちゃん」
「いや、何でもない……」

マスターちゃんか……。
私はへらりと笑ったセイバーから、手元のサラダに視線を戻す。
セイバーのマスターちゃん呼び方にも、もう慣れた。しかし、セイバーの戦闘時の身の振る舞いにはまだ慣れていない。速くて、苛烈なあの動きを目で追えないのだ。マスターしてそれはどうなんだ、あとどれくらいで慣れるのか、と私は溜息を吐いた。


2020.11.19

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