鬼の首が。地面に転がる。
珍しい漆黒の刀身が私のすぐ近くにある。鬼がすぐ側まで近付いてきて、私を殺そうとしていたのを炭治郎が助けてくれたのだと気付く。
どっと汗が吹き出てくる。一つ大きく息を吐き、震えながら空気を取り込む。

「炭治郎〜……、すまんね」
「名前、間に合って良かった!」

そんなに危ない状況だったのか。助かった。私が相手をして、最終的に炭治郎が倒した鬼が最後の一体だった。ここでの任務は完了する。
刀を鞘にしまう炭治郎に続くように、私もぶんと一振りしてから刀をおさめる。
漆黒の刀身。
初めて会った時に炭治郎は水の呼吸だと知った。だからてっきり彼の日輪刀の刀身は水色か青色なんだろうと思っていたのだが、実際は漆黒だったので印象に残っている。
夜の暗闇に溶け込むような黒で格好良い。羨ましいが、炭治郎が珍しいだけらしい。漆黒に染まる日輪刀はそうそうないと言う。

炭治郎に首を落とされた鬼はボロボロと灰の如く崩れていき、徐々にその形を失っていく。
人を襲い、体を食料みたいに食い荒らし、散々被害を出したにも関わらず、何もなかったかの様に消えていく。死体が残ったって困るだけだから、消えてくれるのはありがたい。鬼が消えていく様は、この世に存在することを許されていない生き物みたいに見えて、気持ちが少し楽になる。
禰豆子ちゃんだけとくべつなんだ。人を食べないで、人間の味方をする鬼なんて、禰豆子ちゃんしか見たこと無い。鬼は残酷で、恐ろしい生き物だ。
水面のように静かな瞳。
鬼が消える様を、そんな瞳で見る炭治郎を、私はみている。

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