虫。 虫といえば、蟲柱の胡蝶しのぶさんだ。蟲柱って所で連想した。しのぶさんは強くて綺麗で優しくてとても素敵な人である。鬼との戦闘で傷を負った時にお世話になった蝶屋敷の主人だ。 鬼に対しての態度が怖いとの噂だが、私は目の当たりにしたことがないのでどうとも言えない。怖いってどんな風にだろう。 さて、そんなしのぶさんを思い浮かべても虫は飛んでくる。迫ってくる。
「うわっ」
咄嗟に炭治郎の背中に隠れる。妹さんの禰豆子ちゃんがいる箱をよく見るような体勢を取った。炭治郎が不思議そうに体を捻ろうとするので、「前を向いてて!」と私は声を上げた。少し間を置く。
「……虫、いなくなった?」 「?ああ。虫か、もういないよ。名前は虫が苦手なんだな」 「苦手って言うよりも嫌い」
飛ぶし。ただいるだけでも無理だ。鳥肌が立つ、悲鳴が出る。
「花子も虫がきらいだって言ってたな……、女の子はそうなんだろうか」 「さあねえ……。そういえば、森の奥の奥に住んでたっていう姉弟子は平気だったし、慣れなのかもね」 「慣れか……」
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