そもそもゴールドがわざわざ伝えにきたのは、私が通信機器の類を持っていないからである。
ちょくちょく持っていたりしたんだけど、持つたびになんやかんやで壊すから、ついには持たないことにしたのだ。お金もったないし。
父に連絡をいれた時と、レッドに電話をかけた時は、勿論持っていた。
……そのあと、草むらから急に現れたポケモンに驚いた挙句、機器を近くの海に落としたけど。
じゃれてきた手持ちの子に油断しきったからか、機器を地面に落として、当たり所が悪かったか壊したけど。
タイミングが、間が悪いんだよねえ。
そんなことは今関係ない、と。

「……ふうん」

探している。レッドが私を。
あの顔に似合わず、レッドは粘り強く、諦めが悪い。
ポケモンを持って旅に出る前に、ピカチュウを見たいとトキワの森に向かおうとするレッドを、グリーンと一緒に止めようとしたが、結局出来ずその背中を見送ったことを思い出す。
ゴールドが去った後、呆然から立ち直った私は、すぐにその場を飛びだった。
ほんの少し、嫌な予感を察知したためである。
そして、出来るだけ遠くへ私はやってきた。

「どうしてゴールドが、そんなこと知っているんだろ」

少し遠くのジェットコースターを見ながらつぶやく。
隣でカメックスがなにか言ったか、とでも聞くような様子で首を傾げた。

「なんでもない」

腹を撫でると喜んだように笑う。
かわいい。
――ゴールドは、レッドがシロガネ山にいたって言ってた。
『いたらしい』ではなく、『いた』だ。
……つまり、ゴールドがレッドを発見した?
あの言い方じゃ、そう考えられる。

「ううん……」

じゃあ、ゴールドがレッドを発見したとしよう。
疑問一つ目。どうしてゴールドはあのシロガネ山に行ったのか。
二つ目。レッドはあのシロガネ山にいつからいたのか。
三つ目。食料はどうしていたのか。
思うと疑問がふつふつと湧き上がってくる。
……そして最大の疑問は、誰が下山したレッドに私の……不在を伝えたか。

「お父さん……ではないよね……だってレッドがお父さんに会おうとか思う訳ないし」

まず私のお父さんと会って、なんの話をするというんだ。森の変化かな?そんなこと話して何になるのって感じだから、ありえない。

「……」

レッドが下山して、まず、会いに行くのは……おばさんか!
おばさんから、自分の母親と会って、会話したそのなかで私の不在を聞いた。うんこれだ。
本当に?
本当に………………レッド、ゴールド、ゴールド、はカントーホウエンのジムを制覇していて、それで、ジムリーダーの連絡先を……もしかして。

「グリーン」

もう一人の幼なじみの顔が思い浮かんでくる。
グリーン。トキワジムのジムリーダー。
おしゃべりなグリーンのことだ、挑戦しにきたゴールドにレッドのことを話したのだろう。
それで興味をそそられたゴールドが(あの!ゴールドが!全く想像しにくいけど!)、レッドを探しに旅に出て、ほにゃにゃらの末にシロガネ山に辿り付いたとして。
仮定ゆえに細かいことを省き、レッドは下山。
ゴールドがレッドのことを、トキワジムのジムリーダーに話して、下山してきたレッドをグリーンが待ち構えていたとして。

グリーンが、レッドに、私のことを話すか?

「そんなわけないか」

ないない。
唐突にいなくなった私のことなんて話すわけないじゃない。愛想尽かしてるって。
自分の考えた可能性を手を左右に振り、否定をした。
やはりおばさんか。おばさんが私のことをいったのか。
それでどうして、レッドは私を探すことになるんだろう。
私はただ、他の地方へ遊びに行っているだけなんだけどなあ。
お父さんにもそういっているんだけど。
ずっと帰ってきていないから、失踪したと誤解していたりして。


「ま、いいか!行こカメックス!」


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