今日は、どこに行こう。
ぶらぶらと気の向くまま、森の中を闊歩する。
気分がいいので、鼻歌を歌う。
と、後ろの方から聞いたことある声と、地を走る音。

「あ!ブルーさん!見つけた!なんでこんなとこに、もっと人気の多いところを歩けよ!」
「し、しまった!見つかってしまった!」
「逃げなくていいって!今日は捕まえろって言われてねーし!」
「え」

じゃあなんで、貴方は見つけた!って叫んだの?なんですごいスピードで走ってきたんだ?とやってきたゴールドに疑問を伝えれば、「なんとなく」と首を傾げられた。
……えい。

「いっでぇ!なにすんねん!?脛けることないやろ!」

ゴールドが涙目でぎゃんぎゃん、文句を言ってくるが、無視してやった。
かといってこのまま放置して去るのも、気が引けるので彼の痛みの回復を待った。
しゃがんで脛を摩るのは、新人トレーナーのゴールドである。
二年前にジョウトを出て、あっという間にカントージョウトのジムを制覇し、リーグに挑戦。そして四天王およびチャンピオンを薙ぎ倒した天才だ。

性格は天才と噂されるとは思えない程、子供っぽい。
我儘で、好きなものは好きと、嫌いなものは嫌いと正直に言ってしまう性格。
よく言えば意志が強く、素直なんだろう。
いてーとひとしきり騒いだゴールドは、「口調が戻ってしもうたわ」とぼやきながら立ち上がった。

「ん?キャラ作ってたの?」
「この口調はここやと目立つからな」
「ふぅん……」
「……ああ!そや、俺、あんたにゆーことがあったんやったんよ」
「いうこと?それ言う為に私を探してたの?」

ゴールドが頷く。
改めて一体なんだ。衝撃的な事実でも打ち明けられたり!?
いや、もしゴールドに関することだったら、私には言わないだろう。
もっと先に、相対して伝えたい人がゴールドにはいるんだし。
なら私に関する話だ。私だけが知るべきこと。
なんだろう、どきどきしながら続きを促す。
ゴールドは真っ直ぐ、綺麗な黄色みたいな色の瞳を私に向けた。
見惚れるくらい、綺麗。ずっと見ていたいほどだ。
そしてゴールドは、衝撃的な言葉を紡ぐ。

「レッドさん、行方不明って前にゆったやろ?見つかったんよ、シロガネ山におった」
「…」

え?シロガネ山?
レッドが?シロガネ山に?え、どういうこと?
困惑する私の様子に、ゴールドは少し愉快そうな笑みを作る。

「ほしてこないだ下山してきて、あんたんこと探しとる」
「……」

私を?どうして……あ、そうだ、私レッドに連絡するの忘れていて。
怒られるのが怖くて、今でもしていなく、て。

「まー見つかるん嫌やってゆーんなら逃げたらどや?」
「………」

顔面を真っ青にし、黙る私をゴールドは理解したと解釈したんだろう。
軽く私の肩を叩き、こちらを覗き込んできた。
少し心配そうに「大丈夫か?」と聞いてきたので、なけなしの根性で頷けば、ほっと安心したような表情に変わる。

「んじゃ、伝えたで?……まだいるつもりなん?危ないし、送っていこか」
「いや、……大丈夫、だいじょう、ぶ……」
「ほんまに?まあ、ポケモンも持っているから大丈夫か。一応気をつけるんやで、ほなさいなら」

ひらひらと手を左右に振り、ゴールドは視界から消えていった。
…………。

「どうしよう、怒られる」

私の脳裏に、無言で恐ろしい表情と化した、いつかのレッドが思い浮かぶ。
私とグリーンの間で、伝説となったレッドの顔が。
顔、が。
がたがたと寒くもないのに、身体の震えが暫く止まらかった。


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