ブルーが一度帰ってきた後、どこか行ってしまったらしい。

「は?」

レッドに敗れ、チャンピオンの座を奪われた俺は、マサラタウンに帰ってきて早々、姉ちゃんからそう聞かされた。
俺の阿呆みたいな反応に、姉ちゃんは意外そうな顔をして。

「ブルーちゃんから、聞いてないの?」
「聞いてない……」
「え、じゃあブルーちゃんの居場所も知らない!?」
「知らねぇ!」

その後、めちゃくちゃ騒ぎになったのは、言うまでもないだろう。


ブルーは、茶髪に青い瞳をしたやつだった。
それなりに可愛いと思うが、唐突にどこかに走り去って行ったり、人のことは物陰から驚かせてきたりするようなやつであった。
しかし、俺とレッドが喧嘩していると近付いてきて、仲裁に入り宥め出す。
喧嘩した俺らを繋ぐ役割を、いつの間にかブルーは担っていた。

俺はブルーを嫌っていない。
もちろんあいつだってそうだ。
ブルーは確かにどうしようもない所もあるが、俺らの中では一番大人で。
そんなブルーの前で、格好つけたかったのだろう。
だから二人であまりブルーに迷惑をかけないようにと決めたのか。
しかし、まぁ。

「まさか連絡もなしにどっか行くとかねぇわ」

いや、親父さんには言ったらしいけど。
幼なじみの?俺には?なかったな?おいブルー。
ふざけんなよ、ブルー。
いくらお前の自分勝手さを俺が知っているとはいえ、限度ってもんがあるだろ。
寛大な俺だってな?怒る時だってあるんだよ。
落ち込むブルーの親父さんを前に、腹の底から湧き上がるものを無理矢理押さえつける。
慌てる姉ちゃんの元を離れ、ブルーの家にやってきた俺を親父さんは出迎えてくれた。
どうやらブルーが唐突に帰ってきて、すぐさま出て行ったのは、今から十日前とのこと。
……あいつがジムから出て、チャンピオンロードに向かったのと、同じ頃だと思う。
多分あいつを見送ってからここに来たな。
ブルーの親父さんは、俺にブルーのことを何か知っているかな?ときいて、それに俺が知らないと答えたきり俯いたままだ。
俺もげっそりとしてきそうである。
気まずいとかじゃねえよ、なんなんだよ。
歯軋りをして、髪を乱暴に掻き乱す。

……全くどこにいんだか。


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