テレビをつけたら、グリーンがいた。
え、ええーと、消そう。
しかし、このテレビは私だけのものではない。
キャー!とハートマークがついた歓声をあげた女の子たちのために、グリーンを消すのは諦めた。
席に座り、置いたままだったカップに口をつける。
……けど、まぁ、たまたまつけたテレビにグリーンが出てくるとか、すごい偶然だ。

グリーンは、私の幼なじみである。
派手で、真面目で、お人好し。顔立ちがよくって、茶色の髪と緑色の瞳がきれい。
でもプライドが高く、自分の意見を曲げない子だった。
そんなグリーンが、まさかジムリーダーになるとは思わなかった。いや、全く思わなかった訳ではない。責任感はあるし、人をまとめる力っていうのがある。が、幼なじみが有名になってキャーキャー言われるのってなんだか変な感じ。キャーキャー言われているのを見るのはこれが初めてではないが、私としては複雑な心境だ。
パンを一口齧る、いい具合に焼けていて、とても美味しい。

……懐かしい記憶を辿る。
思えば数年前。私はマサラタウンから色々なところが見たい一心で、後先考えず飛び出した。
……父以外には何も告げないで。
近所の人たちにも、グリーンにも、レッドにも。
……グリーンにも、レッドにも。
後からそのことに気付いた時には、遅かった。
誰とは言わないが、マジ切れされる程の空白が出来ていたのだ。
怒られるのを恐れた私は、結局父だけに連絡を入れ、あとは。
あとは、父に言っておいてくれと頼んだが、どうなんだろう。言っておいてくれたかな。確認していないや…………。
……その延長?で一度も父の元に、マサラタウンに帰らず、うろうろ放浪の旅に出っ放し。
某幼なじみにも連絡を貰ったが、怖くて出られなかった。ごめん。
心中でマサラタウンの面々に、頭を下げる。
逃げるように逸らしていたテレビにはもう、グリーンは出ていない。私は安堵の溜息をついた。
グリーンが、 怖いとかじゃない。怖いとかじゃない。怖いとかじゃない。

「……」

グリーンといえば、レッドが思い浮かぶので、レッドのことを考える。
やつは只今、行方不明である。
以前、道端の人たちの噂と、あの子の電話からかけてきた新人トレーナーからきいた、行方不明の情報。おそらく真実だ。そのことを知った日に電話をかけたのに、つながらなかったことが証拠。
あの自由人は全く一体全体どこにいるんだろう。
とても心配しているが、二人から離れた私に何が出来るのかわからない。
言った先で、レッドをなるべく探すようにしているけど、見つからないまま。

「……んー」

私の様に自由気ままな旅にでも、出たかった、とか?
それはない、ともうひとりの私が、私に告げた。



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