8番目のジムバッチを手に入れてすぐ、私は家に帰ることにした。
レッドの背を見送って、十分見えなくなったのを確認した後、モンスターボールから出したポケモンの背中に乗り、空へ飛んだ。
しばらく海やら山やらを眺めながら飛行していれば、十数分で家に到着する。
十分周りに気をつけながらポケモンの背から降り、ちょっと歩く、とすぐドアの前についた。
がちゃりとポケットにしまっておいた家の鍵でドアを開け、乱暴に開く。
家に顔を覗かせると、びっくりしたようにこちらを振り向いた父がいた。
あ、久しぶり、お父さん!
と心の中で挨拶をし、そして簡潔に告げた。

「お父さん、私、他の地方に遊びに行くから!」

他の人たち、あ、近所の人たちの事ね!よろしく伝えといて!
これだけを言い残し、私はまたせていたポケモンの背中に乗る。
父が静止するよう言ってくるが、黙って無視を決めた。

「待たせてごめんね、行こっか」

頭を撫でてやれば、嬉しそうに一鳴きする。嬉しそうに。
なんて、かわいいんだろうか。
私もこういう風になってみたいなぁ。無理だろうけど。
心中で適当なことを考えれば、ぶわりと羽ばたき、空に急上昇したかと思えば、すぐに彼は唸りを上げてどこかへと向かう。
速い、とてつもなく速い。顔が凍えそう。
いくらなんでも速すぎない?
と思ったがどこでもいいから早く遠くへ行きたい、とここに来る前に零したことを、この子は覚えててくれたのか。
なるほど、速いわけだ。
びゅうびゅうと、風の切る音が耳をどんどん通過していく。
黒の、ミニスカートも翻る。


私はいままであの二人の仲介役を請け負ってきた。
あの二人とは、幼馴染のレッドとグリーンである。
容姿端麗で、性格だってまぁ悪くない二人だったが、とにかく我が強かった。
お互いの意見を聞き合うも、受け入れようとせず、衝突ばかりで前世の歳をあわせてうん十歳な私がいないと、その日遊ぶ遊戯までも決まらないレベルで。
歳を重ねた今はグリーンが譲歩することを覚え、大喧嘩する展開はなくなってきたが…。
うん、あれだね、まだまだお二人さん十歳のこどもだから。
しかたない。
この旅もグリーンに絡まれるとレッドからクレームがきたり、レッドが前にも増して喋らなくなったとグリーンから愚痴られたりした。
その都度、私はお前らのかーちゃんじゃねぇよ!!!!と思ったが、旅を通じてそれらは数を減らしてきている。大人になった証拠だ。
そして、あの二人の旅は終わりを迎える。これはもう大人になる合図。
なら私の旅も終わっていいはずだよね、そうだ自由になっていいはず。ていうかいい加減私離れしてください。
今がチャンスだと言わんばかりに出てきたんだが。

「あははは」

見えてきた海に思考が明らむ、あまりにも綺麗でつい、声をあげて笑う。
あー!楽しみだな!私はいまからどんな景色を見て、どんな食べ物を口にして、どんな人たちを出会えるんだろう!


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