「まあ、俺の願ったことは叶いました。……うん、ほんまは、俺がああしたかったんやけどなあ……」

ゴールドは笑った。
これまでのどことなく切羽詰まっていた笑い方ではなく、嬉々としていながらも寂しそうな笑顔だった。
こういう表情も出来たのかとファイアは目を瞬かせた。

知り合いを集めてキャンプをしようと提案したのは誰だっただろう。
とにかく、主催者とその協力者が集めた知り合いたちは人見知りの協力者に配慮したらしく、ファイアでも見たことある面々ばかりだった。
交流会みたいだな、とリーフがジュースを片手に言っていたが、実質的な交流会で決まりだ。
遠くの賑やかさが嘘のように、ゴールドとファイアの周囲は静かだった。
つい先ほど起こった騒ぎを止めようとリーフがいなくなった代わりに、ファイアの隣にやってきたゴールドは、これまでのゴールドとは雰囲気が違った。
挨拶もそこそこに、今までのそっけない態度について謝られ、最後にそんなことを言った。

「……知っていたよ。僕のこと、嫌なんだって」
「いやじゃないんすけど、気に入らなかったっていうか。あー、いまは違います。ほんまにすみません……」
「責めたい訳じゃなくて……、ごめん口下手で。気にしてないことを伝えたかったんだ」

僕じゃなくたってよかったんだよ、という言葉は飲みこんだ。
いまここでそんなことを言っては、ゴールドに失礼だと思ったから。
――俺の願いは叶った。
ゴールドの願いには、心当たりがあった。
ファイアは賑やかな方に顔を向ける。つられる様にゴールドも、その方を向いた。

「あの子の傍にはいかないの」

笑っている、当たり前に。
笑うことが普通であるかのように。
人に囲まれていながらも、安堵しきったあどけない表情で。
ああ、本当に楽しそうだ。
それが少し前までは有り得ない光景であったと知っているファイアは、純粋にとても嬉しかった。
胸からじわじわと温かいものが込み上げて、ゆっくり満たされてゆく。
ファイアはこっそりと隣にいるゴールドの方を伺う。

「ええ、まあ。行きたいんやけど、今は他の人と交流させたいんです。もともとは、ああやったし」
「…………そっか」
「いざとなればいきます。何があっても、何もなくても。もう二度と、後悔しないように行動するって決めましたから」

ゴールドの瞳が揺らめく。
綺麗に、力強く、暗夜を切り裂く灯のように。
満足そうに頬を緩めた表情は、はっとする程の幸福に溢れていた。
その表情を目にしたファイアは、どうしようもなく安心した。
これまでのゴールドは、辛そうで苦しそうで、それらを隠そうと明るく振る舞っているように見えたから。
きっと元々明るく優しい責任感の強い性格だったのだろう。
もう今は、隠そうとしなくていいのだ。

「あんたは、」
「うん」
「どないなんです。いかないんですか」
「僕は、人酔いしやすいから」
「ははあ、らしいですわ」

そんな会話をしていると、ブルーがこちらに寄ってくるのが分かった。
ブルーは楽しんでる?と片手をあげ、ファイアの隣の空いている椅子に座る。
少し三人で会話をしていると、ゴールドが名前を呼ばれて、ファイアとブルーの側を離れていった。
二人きりになる。するとブルーがファイアとの距離を詰め、こそこそ話しかけて来た。

「ゴールドと話出来た?」
「うん」
「そっか。うん、なら成功かな」

少しだけ微笑むブルーに、ファイアは……ああ、と意図を遅れて理解する。
このキャンプの主催者はブルーだった。




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