「おかえり、ファイア、今日もマイカちゃんに会って、リーフ君と遊んできたの?」
「ううん、三人で遊んだ」

お母さんの言葉に首を横に振る。
目を瞬かせたお母さんが驚いた様に笑う。
キッチンの方からぼくの方へ身体を向けてきた、ぼくはお母さんに二歩ほど近付く。

「マイカちゃんも?初めてじゃない?」
「うん…気が向いたんだって」

マーちゃんと呼ぶ始めて数日経った。
いつも通り話しをしようと家へ行けば、やけに焦った様子のマーちゃんがいた。
ワンピースじゃなくて、半袖とズボンを着た格好。
珍しくて、窓越しからじっと見つめていれば、勢いよくマーちゃんがこちらを振り返る。切羽詰まった顔だった。
驚くぼくにマーちゃんに言った。

  『  今日、一緒に遊んでもいい?   』

聞いたことのない強張った声色のお願いに、思わずぼくは頷いた。
その後は言った通り、何故か急かしてくるマーちゃんを連れて、リーフの元に行けば。
自分で言って来たのに、嫌そうなまま沈黙するマーちゃん。
得体の知れないものを見る瞳で、マーちゃんを見るリーフ。
そんな二人を強引に引き摺って、いつもの遊び場に歩くぼく。
三人で異様な雰囲気のまま遊び始めた。
最後の方では、マーちゃんとリーフはぼちぼち喋っていたから、仲良くなったと思う。
良かった。

でも、どうして急に一緒に遊んでいいか、なんて言ってきたんだろう。

「よかったじゃない、ファイアはずっとマイカちゃんと遊びたがってたものね、何して遊んだの?」
「リーフの家で、ポケモン見て遊んだ」
「楽しかった?」
「…楽しかった」

本当に。
お母さんが急に顔を暗くして黙った。
その表情にぼくはどうしたの、と声を出す。
すると、強張ったまま、
「マイカちゃんを、傷付けないようにね」と返答された。
傷付けないように?
どういうこと?
抱いた疑問を正面からぶつければ、やや間があって、お母さんが口を開く。

「なんでもないわ、でも気を付けて接するのよ、おじさんたちの言葉に耳を貸しちゃだめ」
「…うん」

頷けばお母さんが真剣な目を細める。

「いざとなったら、ファイアがマイカちゃんを守ってあげてね」
と締めくくり、キッチンの方へ戻っていった。

………ぼくが守る。
………マーちゃんを?

「そんなこと、出来るかな」

出来ないんじゃないかな、だってぼくは兄のように強くない。
誰かを守る行為なんて、今までしたことないし。
助ける、助けて貰っているのどちらかといえば、いつもリーフに助けてもらっている。
そんなぼくがマーちゃんを?
きっとそんなこと。
暗い考えを振り払うみたいに頭を左右に揺らし、小さく息を吐く。
止めよう。考えるのを思うのを知ることも。
だって、マーちゃんのことなんて全く知らないんだから。

………ぼくは手を洗いに洗面所へ向かう。




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