「ファイア、お前、マジでまた行くのか?」
「…ぼくはいつでも本気だけど」
「知ってる!お前がそんな性格だって、知ってっけど!」
「今日も、当たって…砕けてくる…」
「格好つけんな…格好悪いぜ…?」
「リーフ、またすぐに」
「おー、…………相変わらず、諦めわりぃな、あいつ」


リーフから一旦、離れてぼくは歩く。
ぼくの家から五分程の所に、おばあさんの家はある。
日当たりのとても良い、森に近い一軒家。
そこに、ぼくの会いたい女の子も、住んでいるのだ。
玄関から、裏庭に回り込み、開けっ放し窓の中を覗く。

「マイカちゃん」
「……また貴方?」

洗濯物を淡々と畳む、マイカちゃんの名前を呼べば、怪訝そうにぼくをその濁った目に写した。

マイカちゃんがマサラタウンにやってきて、約二週間が経過した。
約二週間でマイカちゃんについての、推測がたくさん、今も飛び交っている。
例えば、かくしご?とか、よにげ?とか。例えばの嵐が続いているのだ。
物知りなリーフが顔を顰めていたから、よくない言葉なんだろう。
マイカちゃんに、言っちゃいけない言葉。
楽しいことが少ないマサラタウンにとって、マイカちゃんへの推測は、いいしげき?らしい。
おじさんたち曰く。
…意味は分からないけど、気分悪い。

「しつこいなぁ、何のよう?」

嫌々とマイカちゃんが言う。

「話が、したいんだ」
「何度もいうけど、私はしたくない」
「ん……ねぇ…」

いつも通り突っぱねられる、が気にしないふり。
そして、前から思っていたことをマイカちゃんに告げた。
慣れ慣れしくて、図々しい、ぼくらしくないお願いを。


「マーちゃんって…呼んでいいかな?」


マイカちゃんがぼくの言葉に固まった。
顔が急速に強張るマイカちゃんに、第一歩目の歩幅を間違えたと気付く。
どうして、そう呼びたいのかと聞かれれば、おばあさんが呼んでいたから、そう答えるしかない。
……マイカちゃんに、親近感を持って貰いたかったのかな。

「ごめんなんでも「別にいいけど」………え?」

少し、硬さがとれた声に顔を上げる。
マイカちゃんは、僅かに澄んだ気がする目を細めていた。
不機嫌をベースとした、複雑な表情のマイカちゃんの発言に耳を疑う。
呼んで、いいの?
マーちゃんと。

「え、あの、ありがとう、その、マーちゃん…?」

言葉を理解し終えたぼくは、つっかかりながらも、マイカちゃんを、マーちゃんと呼ぶ。
小さく頷かれて、ほっと一息。
マーちゃんが、再び洗濯物に向き合う。
今日は、これまでおしまいみたい。

ぼくは、「またあした」と言い残し、リーフの元へ走り出した。




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