十歳の春、私は旅立つにあたり、ポケモンを貰えることになった。
おばあちゃんからプレゼントされた服を着て、旅の一式を詰め込んだリュックを背負う。
「いってくるね」
そう口にして、おじいちゃんの家を出る。
生温い風が春を告げに来る。
もう少し冷たい方が、私は好きかな。
森の付近に沿って、博士のいる研究所に向かう。
博士、詳しく言えばオーキド博士。
更に詳しく、リーフのおじいさん。
何でもポケモンについて研究しているらしい。
研究所のお庭は広くて、ポケモンがたんさんいる。
ポケモンのタイプ、とかの研究だって。
実績がすごくて、世界中から注目される凄い人。
そんな人にポケモンを貰えるなんて!と二人が喜んでいたほどだし。
「……みえてきたー」
大きな研究所は、いつ見ても立派。
博士っていう仕事、儲かるのかな、逆にお金がかかりそうだけど。
どうなんだろう。
今度リーフに聞いてみようと思いながら、ドアをノックする。
すると、研究員の人が出てきてくれた。
「あら、マイカちゃん」
「こんにちわ」
「ポケモンよね?こちらへどうぞ」
「はい、ありがとうございます」
女の研究員の方に、中へ入れて頂く。
奥に案内されれば、
「あ、」
「…お、よーマイカ」
「リーフ、おはよう」
友人のリーフが椅子に座るが見えた。
明るい茶髪と新緑のような瞳が特徴のかっこいい男の子。
とても物知りで頭がいいから憧れる。
リーフは本をテーブルに置き、私にひらひら手を振り、眠たげな目を細めた。
「眠るの、もしかして遅かった?」
「…少しだけな」
「そっか、ポケモンはもう貰ったの?」
「――ファイアが、お前が選んでからにするーだと」
俺もそう思ったし、待ってた。
リーフの言葉に「待たせてごめん」と謝罪する。
「別に謝んなくていい」顔を逸らしてリーフが頬を掻く。
「で、そのファイアは…」
「散歩しに行ったぜ」
「…お散歩……」
呑気だよなー、の声を聞きながら、私はそっと目線を横に流す。
…帰ってきたら、ファイアに謝ろう。