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「……ねぇ」

「何ー?沖田さん」

「僕の仮装って、狼だよね?」

「うんうん」

「…………じゃあ何で君は、『猫じゃらし』を持ってるのさ?」




沖田さんの言う通り、私の手には猫じゃらしが。
だって、沖田さんに獣耳がついていると――


「狼っていうより、猫って感じがするじゃない?」





私はちゃんと、狼男の衣装を彼に渡した。
それは確かに彼に似合っているんだけど、やっぱり猫にしか見えない気がする。

沖田さんって気紛れだし、日頃の行いもそう思わせる原因だと思うの。


でも、狼と猫って耳の形とか違うはずなんだけどな……(尻尾は完全に違うけど、この際ムシムシ)。



「…はぁ」


猫と主張し続ける私に、ため息をつく沖田さん。

だから、普段の沖田さんが猫っぽいのが悪いんだって!!




「じゃあ、もう猫でいいよ。……その代わり、可愛がってよね」



そう言って、沖田さんは私の肩にもたれ掛かってきた。


ここで、普通ならキュンとするかもしれない。

でも、彼は思いっきり体重をかけてくるのでトキメキも何もあったもんじゃない。

こんのふてぶてしい猫め……っ!!



「ちょっと沖田さん…!重い、重いって!!」



肩に埋められた頭を叩きながら抗議すると、緩慢とした動きでその頭が持ち上げられる。




「んー?じゃあ、これ以外なら構ってくれるの?」

「分かった、分かったから!!も…ギブギブ!!!!」



その瞬間、キラリと光って細められた瞳。


あ、しまった――と思う間もなく、唇に熱が触れた。



「それ」は、たっぷり時間をかけて私の唇を味わい、やがて離れていく。






「遥香ちゃん。『猫』の僕と遊んでよ」





それだけでは足りなかったのか、ジリジリと迫ってくる沖田さん。

その手には、私が持っていたはずの猫じゃらしが。



わざわざ「猫」って強調してくる辺りに腹が立つのよね…。





私は少し、彼をからかいすぎたようだ。

これでは、逃げたくても逃がしてはくれないだろう。




――猫の皮を被った「肉食獣」のスイッチは入ってしまったのだから。









(やっぱり、沖田さんは猫じゃなくて正真正銘の狼だわ―――!!!!)
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