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有給休暇を取り、予約しておいた病院で検査をした僕達に告げられた結果はある意味想定外だった。
「「脂肪肝?」」
「そう、脂肪肝」
森永卓郎を綺麗にした感じの内科医は、僕達に嬉しそうに答えた。
「何で?って思ったでしょう。だって、旦那様太ってなんかいない、いい体してらっしゃる。何かスポーツやってるでしょ?」
「はい」
「でも、ジュースとかお菓子大好きでしょ」
「はい」
そこで思い浮かべたのは第一の魔窟。
コーラとかサイダーとかお菓子の新商品や期間限定のものがざくざく詰まってる、僕の宝箱。
「太ってない方でもね、甘いもの取りすぎるとなるんですよ。これからは控え目にしてくださいね」
色白の森永卓郎の楽しげな言葉に美佳ちゃんはうんうんと頷いていたけど、僕は病気とはまた別の、不吉な気配を感じていた。
帰りの車の助手席で、美佳ちゃんはとても上機嫌だった。
「良かったあ。大したことなくて」
「そうだね」
「ご飯作るとき、カロリー計算しようか」
「よろしくね」
「お菓子とジュースは当分禁止ね」
「ええ!?お風呂上がりのコーラとお菓子の新商品集めるのは僕の楽しみなのに」
「お風呂上がりは麦茶。お菓子は買っても食べなきゃいいじゃない」
「なにその蛇の生殺し」
酷いなぁ、美佳ちゃん。
だけど下剋上を試みたとしても、きっと彼女にはかなわないまま終わるんだろう。
「ま、いっか」
「そうそう」
そう。
甘いものが欲しくなったら、美佳ちゃんを食べればいい。
いつもは手のひらで転がされていても、そこだけ僕の思い通りになれば構わない。
「覚悟しておいてよね、美佳ちゃん」
「え?」
――君にはお腹いっぱいになるまで付き合ってもらうから。
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