1.閉じられた運命

もしもあの日、時渡りの数珠を手に取らなかったら…。そんな発想から生まれた『運命の人』現パロSSです。

クリスマスの魔法をお楽しみ下さい。2011.12.24








我が家に150年ほど保管されている、桐の箱。その中に仕舞ってある古い一通の手紙と数珠。


  二千十年十二月十二日、数珠を持って時を渡って下さい。大丈夫、怖がらないで。

  きっと幸せになります。


無理だよ。そんな事、出来るわけない。私は手紙の文字を何度も追い、目を瞑って溜息をついた。

何が待ってるかわからないのに、幸せになれるなんて保障はどこにもないのに、こんなの……。

「無理だよ、ね。寂しくても……頑張らなきゃ。私の生きる場所はここだもの」

私は誰もいない部屋で一人そっと言葉を紡いだ。自分で自分に言い聞かせるように。

桐の箱は開けた時と同じように慎重に閉じ、再び金庫の中に仕舞われた。



やがて玄関のドアが開き、誰もいなくなった部屋にガチャンと扉の閉まる音が響いた。






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