「楓ちゃん…」

浅い呼吸を繰り返して、俯せる華奢な白い背を抱き寄せる。
後ろから廻した手に伝わる今だ激しい鼓動。

僕の身体に張り付けるみたいにその背を添わせれば、終わった後の楓ちゃんの強い女の匂いに僕の臭いが混じって、僕の独占欲を擽る。

僕等の間を裂く楓ちゃんの長い髪を掻き分けると現れた細い肩に口付ける。

「ん、はぁ…」

冷めきっていない身体は直ぐに反応して、鼻から抜ける甘い声があがる。
背中に、腕に、僕が着けた紅い跡を辿って舌を這わす。
脇の下に口づけた時、いつも感じてた疑問を不意に思い出した。

「総司さん?」

僕の動きが止まったのを感じた楓ちゃんが怪訝そうな声を上げた。



「前から聞こうと思ってたんだけど…」

僕は上体を起こして、楓ちゃんの顔を覗き込みながら、長年?の疑問を口にした。

「楓ちゃんて、ここに毛…がないよね?」
「は?……ひゃん?」

楓ちゃんの腕を上げて、脇をペロッと舐めた。

そう…楓ちゃんって、脇が子供みたいにツルツル…なんだよね。

楓ちゃんは嬌声…あ、悲鳴か…をあげてから、僕の疑問は想定外だったらしく、目をとんでもなく見開いた。

……そんなに驚く事?
僕からすれば、あって当たり前、ない方が不思議なんだけど…
楓ちゃんがくるりと反転して僕と向き合う。

「え、っと…私のいた時代の女の人は大体、ないです」
「ないの?」
「あ、ないって言うより、処理しちゃうんです。
剃っちゃうとか抜いちゃうとか…」
「髭みたいに?」

コクコクと頷く楓ちゃんに今度は僕の方が目を見開いた。

「未来じゃあ、そんな事する必要があるの?」
「必要って言うか、その方がキレイに見えるから…」

そう言って、楓ちゃんが急に足を宙に伸ばして、自分の膝下を撫でる。

「後、足とか…」
「足?」

耳を疑う僕に気付かず、楓ちゃんは僕の手を取って足を撫でさせる。

「この方がキレイだし、触って気持ちいいと思いません?」


ん?
ちょっと待った。
見えるって…?
触るって…?

「誰が見るの?こんな所…
誰が触るの?楓ちゃんの足に…?」

聞き捨てならない言葉に、僕は眉を顰める。

僕が不機嫌になっていくのを見た楓ちゃんは、慌てて首を振る。

「キャミとか着た時に見えないようにって事で…、
誰かにってわけじゃ…
足もスカート履くときにキレイに見えるって事で…」

必死に言い訳しながら、楓ちゃんは“きゃみ”とか“すかーと”とか未来の着物の説明するけど…

ちょっと待った…

君が示した未来の着物だと…
君は肩や腕、脇を…
その足を他の男に見せてた…って事?


「総司さん…?」

不機嫌の極致の顔した僕の顔を恐る恐る、覗き込む楓ちゃんの両手首を押さえ付け、覆いかぶさる。

「そ、総司さん!?」
「楓ちゃん、他の男にもこんなとこ見せてたの?」

と、首筋から鎖骨を舌でなぞる。

「あぁ、ん…」

ビクッと反応する楓ちゃんの脇に舌を這わせる。
ペロペロと舐めると、
ビクビクと身体が跳ねる。

「み、皆、そういう、服を…来てるん、です…」

僕が両手首を放すと、息も絶え絶えに身を捩る楓ちゃん。
その荒い呼吸に合わせて揺れる乳房を両手で揉み上げ、指先で突起を摘む。


「ここも見せたの?」
「やぁ…ん!…、あ、はぁ…そんな、事…してな…い」

乳房を差し出すように身体を仰け反らせる楓ちゃんを抱きしめ口唇を重ねる。
その姿はもっと…と強請るみたいで、妖婦そのものだ…と思う。

楓ちゃんの時代の他の女の子が何、見せてたって、僕には関係ない。

だけど、君の肌を誰かが見るなんて許さない。
君を見ていいのも、君に触れていいのも僕だけだよ。


やっぱり君を元の時代になんか返せない。
返してなんかあげない。
返さない。


キレイな足を撫であげる。
確かに気持ちいいと思ったけど、それは楓ちゃんには内緒。

さぁ、
僕を待ち侘びているはずの君の中へ、君が僕のものである証しを刻み込む事にしよう。

 
 


睦言 その1





「え?あそこの毛を剃っちゃうの?」

「そういう水着を着る人は剃りますよ」

「楓ちゃんの時代って、新八さんが喜びそうな時代だね…」

「言えてるかも…」

「やっぱり、君は返せないや…」

「は……?」

「……何でもないよ」





fin.
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