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学校行事で行った先で、勝手気ままな時間が そんなに続く訳もなくて…



「コラーッ!!
お前等何時まで起きてやがる!」


って、土方さんみたいな怒鳴り声が聞こえたのは、10時を…5分位過ぎた頃だと思う。


勿論、その声は土方さんじゃなくて、うちのクラスの担任だった島ちゃん。


飛び上がる位にビックリした私達。
頭が一瞬にして真っ白になって、みんなわたわたと挙動不審。



『開けるぞ!』と声がして(一応、女子の部屋だったから、いきなり開けるのは止めたみたい)

カチャ…

とドアノブの音がしたのと、ドア近くにいた子が部屋の電気を消したのがほぼ同時。


一瞬にして真っ暗になった部屋で、私達は心の中で“good job!”と叫んで手近な布団に潜り込んだ。


キィ…っと、開いたドアから青白い常夜灯の明かりが差し込み、
その中に形取られる、人影。


ドアノブを手にしたまま、出口を塞ぐように仁王立ちの島ちゃんの気配が部屋の中へ広がって行って…


ドキドキする心臓が痛くて、同じ布団に潜り込んだあっちゃんの手をぎゅっと握りしめたの。
あっちゃんも不安だったのかな、やっぱりぎゅっと握り返してくれて…


なんだが、ホッとしてそっちへ向けた目に、飛び込んで来たのは窓の月。


あっちゃんの後ろにある窓の外。
寝転がって布団から目だけを出して見上げれば…、

真ん丸じゃないんだけど、くっきりと縁取られ月が突き刺すみたいな光を放つ。
幕末の、この京の町より暗い、夜の帳が落ちた闇に浮かぶ冴え冴えとした月。



「きれい………」


小さく小さく呟いた言葉は、あっちゃんには聞こえたみたいで、

背を反らせて見上げた景色に、私の手を握る手に力が篭る。
それが『ホントだね…』って言ってくれたみたいで…

嬉しかった。




どれくらい緊張をはらんだ沈黙が続いただろ…



微かに、『はぁ…』という吐息だか、溜息だかが聞こえて、
唾を飲み込めない位の緊張感をプツッと鋏でちょん切る様な含み笑いが響く…



「………ったく、お前等、さっさと寝ろよ」



目を瞑っても、暗闇でも分かった苦笑気味の島ちゃんの声。

島ちゃんも釘は刺したものの、私達がちょっと浮かれ気分なのをわかってくれてるみたいで…


『お前ら、菓子没収な』という無情な言葉の後、にパタンとドアが閉まり……、


はぁぁぁぁ…


肺の中の空気が全部無くなったんじゃないかって位の息が出た。

それと同じ様な音があちこちから上がって、
暗くて分からないけど、みんながぐったりしているのは簡単に想像出来た。


と、とりあえず…
男子がこの部屋にいるって事はバレなかったよね?


お菓子食べてた事より、就寝時間守らなかった事より、
それが一番ヤバイもんね。



「男子、もう部屋に帰りなよ…」



誰かの低い囁く声が追い立てるれば、



「まだ、ヤバイって!
島ちゃんがまだそこら辺ウロウロしてるかもしんねーぞ」
「えーーっ!?」
「マジ?」


部屋の外に漏れないように小声で話すみんなの声がぼんやりと霞んできて。


一気に緊張の極致まで行った気持ちが、一気に解けたせいか…
体中の力が抜けて行く…


頭も体もほわり、ほわり…と浮いてるみたいで…


急速に襲って来た眠気に瞼が落ちてくる。


部屋の中でみんながまだ、あーだこーだ、と言ってるのは、うっすら聞こえたけど…



「ふあぁぁ…」



月を背にぼんやり見えたよく見えないあっちゃんの大きな欠伸が見えて…


女の子とは思えない豪快な欠伸に、ニヤニヤと顔を緩ませながら、
私は『おやすみ…』と、握った手を胸に抱え込むように引き寄せた。







※※※※※

 
 


「何?結局、男の子達はそのまま帰らなかったわけ?」
「そうみたいですね」
「『そうみたい…』って…他人事みたいな言い方だね?」



そこで、言葉を切った途端に、口を挟んできた総司さん。

その呆れた…というか、面白くなさそうな口調に身を縮めてしまう。



今、気がついたけど、
さっきまで総司さんの足の間に座らされていた私は、
いつの間にか総司さんの膝の上に座らされていて…

べったりとくっつかれた背中と、
頬が乗せられた肩が総司さんの声に震える。



総司さんは他人事みたい…って言うけど、


私の膝を抱える総司さんの手を胸元に抱き寄せた。




だって、あれから…
 
 

 

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