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そのあとは、着物という事と大人の仲間入りの意味を込めて近藤さん行き付けの料亭へと

向かい、美味しい料理に舌鼓を打ち店の雰囲気を楽しむ。



食事も終わり出て来た桜茶を飲みながら、今日美佳に渡そうと思っていた物があった事を思い出した。

ジャケットの内ポケットからそれを取り出すと、右の手に握り込んだ。


「美佳、ほら手をだせ。成人の祝いだ、受け取っちゃくれねぇか?」

『何くれるの?』


美佳に向かって突き出された拳の下に、両手を揃えて差し出す。


その掌に握り込んでいた物を”ぽとん”と落した。



『・・・・・・これ・・・・・。』




美佳の掌に乗ったのは、1つの鍵・・・・








俺の部屋の鍵だった。










俺と美佳が出会ったのは、2年前・・・こんなガキに嵌るとは思っても見なかった。



ふっと気を許した瞬間に見せる笑顔に魅せられたのが・・・嵌る切欠だった。

そしてくるくる変わる表情に、時折見せる大人びた表情に・・・・

そしていつも俺を立ててくれるガキにはない気遣いに完全に落された。


その頃だ・・・成人式のその日まで共に在ったら、これを渡そうと思っちまった。





そして・・・・今日その成人式。






未来を繋ぐための約束の代わりに、鍵を渡そう・・・・・・。









「俺の部屋の鍵だ、お前の好きな時に使え。これでもう、俺の全てがお前のもんだ・・・

大人になっちまったからなぁ・・・・覚悟しろよ。」


染めた頬、潤んだ瞳、何か言いたげに少し開いた口・・・・・大人の仲間入りしたにしては幼げな表情に愛おしさが募る。



「さて、この後は決めてないんだが・・・お前はどうしたい?」


俺の問いに少し俯いて答えた。





『この鍵で・・・歳の部屋に・・・・・行きたい、かな。』







「わかった。」









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