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『凄い!歳、覚えてくれていたの!?』
半年ほど前に冗談で話していた、(成人式の後でサロンのシャンパンをBaccaratのカプリで飲みたい。)を本当に叶えてやった。
「サロンは手に入れるのにちと苦労したんだがな・・・一生に一度だけの記念日だ。
本当はお前と同じ歳の・・・と思ったんだが、作られてなくて1番近いこれだが・・・。」
1990年のサロンは当たり年の中でも更に当りで、人気が高いらしく近藤さんのコネクションを借りて手に入れた物だ。
グラスに注いだシャンパンは、輝く薄い黄色をして繊細で木目細かい泡を立ち上らせていた。
シーツを巻き付けたままベットの上にいる美佳にグラスを1つ渡し、その隣に腰掛ける。
「とにかく乾杯だな。」
軽くぶつかるグラスの音色が響く、薄いガラスの響く音は耳に優しく届いた。
口に含むと様々な花や果物の甘い香りが広がった。
『おいしい!!』
嬉しそうに輝く美佳の笑顔につられ、俺の口角も緩む。
床の上に散らばった振袖も・・・・・
宮棚に載せたままの簪も・・・・・
乱れた髪もそのままに今この時を楽しむ。
途切れることなく立ち上るシャンパンの泡・・・・
共に歩もうと誓った俺達の為に・・・・・・
その小さなグラスの中で祝うように揺れている・・・・・
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