カンリさんより 逆トリ竹谷



※カオス下ネタ展開注意!笑って許せる方のみご覧ください


 竹谷は目を覚ますと生ぬるい湯の中に浸かっていた。確か今は忍務の途中で、城へ潜入していたのがバレたので追われていたのだ。学園を卒業してから幾年か経つというのに、何とも情けない限りである。全力疾走していたら足元が崩れて、それ以降の記憶はない。


(無事に逃げ切れたのか…?)


 辺りは真っ暗闇。風は吹いていない、というか自分が遮蔽された空間の中にいることを知る。かなり狭い空間だ。強かに打ちつけて痛む身体を起こすと、ザバアと水が滴り落ちる。

 竹谷はそこで初めて、自分が一糸纏わぬ姿であることに気付いた。


(奴らに…捕まったのか!?)


 身に付けていたはずの装束や武器の類はどこにも見当たらなかった。やられた、と臍を噛むが辺りに人の気配はない。幸いにして身体を拘束するものもなかった。
 これはすぐに逃げ出すべきだろう。そう決心した竹谷は自らが入っていた桶の縁を跨ぎ、脱出を図るのだが。

「なっ…、うわっ!」

 足を付いた先は濡れており、ひどくぬるついていた。用心していたはずなのに何らかの固形物を踏みつけてしまい、体勢を崩した竹谷はその場にひっくり返ったのだった。


(なんだ…? このにおいは…)


 音をたててしまった事を焦りながらも冷静に状況を把握しようと努める。とりあえず怪我はないようだった。ひどく滑っている足の裏を触るが血が出ている様子はない。得体の知れないものを踏みつけた足。だがその手から香るにおいには覚えがあった。
 これは、確かしゃぼんとか言う物ではなかったか。


(どうしてこんなモンがこんなところに…)


 疑問に思いつつもここに長居は無用である。大きな音を出してしまったが、幸運なことに人が来る気配はなかった。手探りで辺りを調べ、引き戸らしき物を確認したのでそろそろと開けてみる。
 吹き込む乾燥した空気。鍵はかかっていなかったようだ。なんと手薄な警備なのだろうか。
 細く開けた戸からそっと身体を抜け出させて、じっと気配を窺いながら戸を閉める。足裏には手拭いの感触がしていた。どうやらここに敷かれているものらしい。丁度良いのでぬるついていた足裏を拭い、身体の水気を適当に払っておいた。


(何か…着るモンはねーかな…)

 竹谷は全裸だった。別に羞恥心はそれほどないが、忍ぶとなると肌色は目立ちすぎる。ボロきれでも何か肌を隠すものが欲しかった。
 乾燥した室内。風のわずかな流れから、ここが細長い空間であることを知る。道が続いているであろう先をじっと見据えると、わずかな灯りが見えた。既に目は暗闇に慣れはじめている。
 足元に籠があることに気付いた竹谷は、その中に入っている衣服をあさりはじめた。

 中には大きな手拭いが一枚と、あとは細々としたものが幾つか入っている。感触は木綿や麻のようなものではなく、もっと柔らかくて薄いものだ。ふと明らかにおかしな形のものがあることに気付き、不思議に思って目の前にぶらんと引き上げてみる。

(…?)

 細長い形。中ほどには小山が二つあり、その山の輪郭は厚い。両極には小さな金具が付いており、また山と端の太い紐部分が細い紐で繋がれているようであった。色は判然としないが、全体がやけにビラビラとしている。これは一体、何の用途に使われるものだろうか。


(鉢巻き? 鞭にしちゃあ変な形だな…拷問用の目隠しか?)


 ちょうど小山が目元にくるようピタリと押し当て、左右対象に伸びる太い紐を縛ると当たり前だが視界は遮られる。細い二つの紐は頭を固定するためのものだろうか。鼻を押し付けてクンクンとにおいを嗅いでみる。…どうやら使用済みらしい、かすかに汗のにおいがした。
 もしかしたら何かの役に立つかもしれないと思った竹谷は、その目隠しを持っていくことにした。

 ごそごそとあさっていると、次は猿股のようなものを引き当てる。だが、その生地は非常に薄くてもろかった。こちらも色は判別できないが、どうやらぼんやり肌が透けて見えるようだ。目をこらせばこの生地が無数の細い糸が粗く織り込まれて作られていることに気付く。形自体は小さいが、伸縮性に富んだこの猿股。何も履かないよりはまだマシか…と竹谷はしぶしぶその猿股に足を通すことにした。
 のだが。


(ピッチピチじゃねーか…!)


 とにかくものすごく小さかった。尻部分になると生地が足りなかったので、下の比較的余っている部分から少しずつ引き上げてなんとか尻が収まったのだ。それでも少し動けば破れてしまいそうだった。締め付ける力が強いのだ。
 しかしこの猿股を履いていれば褌がなくても良さそうである。股間はブラブラと揺れたりせずにピッタリと内腿に収まっていた。手頃な大きさの手拭いがあったので、竹谷はそれを腰に巻いていく。せめてもの目隠しというわけだ。

 こうして竹谷は衣服を調達するわけなのだが、とにかく猿股を履くのに戸惑ってしまい、思ったよりも時間をくってしまっていた。竹谷は続いて取り出した小さな三角の形をした布を頭に被る。広げれば半球の形状をしたそれ。ちょうどよく大きな穴が二つ空いているので、顔を隠すのに適していたのだ。穴部分から目を出すようにすると、額から鼻、そして口元が布で覆われる。やはり使用済みらしく何らかのにおいがしたが、この際気にしている余裕はなかった。
 大きな手拭いを外套のようにして身に纏い、竹谷はおぼろげな灯りの方に向けて慎重に足を進めていく。自らの装束は勿論、他に羽織れそうな衣服はなかった。上に着るような薄い装束らしきものはあったが、いずれも大きさが合わなかったのだ。無理やり着ようとすればビリッと音がしたので、上着を着るのは放棄することにした。
 探していた少し長めの道の先には開き戸があった。取っ手のようなものがついていたので調べているとカチャリと扉が開いたので、竹谷は冷静に周囲の様子を観察しながら割と広めの空間へそっと足を踏み入れていったのだった。


 入った空間は今までで一番の広さがあった。ごちゃごちゃと色々なものが置かれている。部屋の中央には卓袱台のようなもの。蜜柑がいくつか転がっているのが見える。床は温かい敷物で覆われており、この部屋がいかに身分の高い者の部屋であるかということが分かった。耳をすませば一定の感覚でチクタクと鳴る不思議な音、そして。


「う…、んん…」
(…? 女の部屋なのか…?)


 部屋の奥から聞こえてきたくぐもった呻き声。目をこらせば一番奥まったところにこんもりと布団の山があるのが見える。意識がないのだろう。すぐに穏やかな呼吸の音しか聞こえなくなった。寝ているのだろうか…?


 竹谷は、一体ここがどこなのか再び疑問に思った。自分はてっきり敵に捕まって地下牢にでも入れられたのだと思っていたのだが、見るからにこの部屋は身分の高い娘の部屋だ。地下牢とそんな部屋が近くにあっていいはずがない。
 いや待てよと竹谷は顎を摘む。最初に自分が目覚めたあの部屋は真っ暗闇だった。一通り調べたつもりだが調べきれていなかったのかもしれない。もし自分が見つけた出口が前に囚人の誰かが作った秘密の抜け道のようなものであったのだとしたら…!
 そう考えるとこんな所に通じていてもおかしくはない。…しかし、だ。


(あんなに分かりやすい抜け道があんのか…?)


 秘密、という割にはあの引き戸は隠されてはいなかった。見張りが見回りに来たときにすぐバレてしまいそうである。考えれば考えるほど訳が分からなくなっていく。
 とにかくは脱出が先決だった。布が何枚か重ねられた面があり、その布がおぼろげに光っているのが見える。間違いなく外に繋がっているのだろう。考えるのは一旦止め、竹谷は息を殺して壁に忍び寄る。外のものが透けて見える不思議な板。おそらく窓なのだろう。布を引き、なんとかして窓らしきものを開け、外に出るのだが。


「なっ…!?」


 外に通じると思われたその先。透明な板の外はなんと柵で仕切られており、身を乗り出して覗いたその下は地面が遠い。つまりここがなかなか高い所に位置していることを示している。
 空は暗い。夜なのであろう。それにしてもやけに明るい所だと竹谷は思った。そこかしこに灯りが灯され、何やらが風を切る音やコツコツという乾いた靴音も聞こえる。
 見覚えのない町だ。竹谷は人気のない山の中を走っていたはずなのに。不思議なことが多すぎる。混乱した竹谷は、ただひたすら瞬きを繰り返していた。

 自分は一体、どこにいるのだろうか。と、その時である。


「だ、誰…?」
「!」


 呆気に取られていた竹谷は、背後の気配に気付くのが遅れてしまった。慌てて振り向けば、先ほど見た布団の中で寝ていたと思われる人物…少女が布団から抜け出てその脇に立ち、呆然とした様子で自分を指差していた。


「きっ、きゃあああ!」
「チッ…!」


 耳をつんざくような黄色い悲鳴が部屋に響き渡る。見張りにでも気付かれれば厄介だ。竹谷は顔をしかめると瞬時に地を蹴って少女の目の前へ移動し、押し倒したその身体の上に馬乗りになって小さな口を塞いだ。


「んーっ、んーっ!」
「おい、静かにしろ。何もしねえから!」
「!?」


 竹谷の下でじたばたともがく少女は、竹谷が手にしている物を見て目を見開いた。それはまさしく先ほどの拷問用目隠しであるのだが、不思議と少女はピタリと動きを止める。
 見れば、今度は竹谷の顔を凝視していた。


「…いいか、おとなしくしてれば何もしねえし、手もどけてやる。ただし騒いだら…分かってんな?」
「…っ」


 低い声で脅すようにそう言えば、少女はコクリと頷く。そっと手を外してやると、カタカタと身を震わせた少女はゆっくりと深呼吸をした。
 おそらく怯えているのであろうが、それにしては表情がおかしい。口元をもごもごとして、なんだか吹き出しそうな様子である。
 訝しみながらも、竹谷は冷静に詰問していった。


「ここはどこだ。言え」
「…○×市」
「○×? 聞いたことねえな…まあいい。見張りに見つからねえ出口を教えろ」
「…で、出口ならそこの扉出て右に玄関ありますけど」
「分かった。…驚かせてごめんな」
「わっ!」


 最後の方で幾分口調を緩めてそう呟くと、竹谷は身に纏っていた手拭いで少女の顔を隠すようにし、ひらりと身をおどらせて扉の先へ駆け出していった。足音も聞こえないうちにカチャリと僅かに玄関の扉が開く音がし、完全に気配が消え去る。

 取り残された少女は慌てて身体を起こすと、竹谷が消えていった扉の先を見つめてポツリと呟くのだった。



「パ…、パンツライダー、現る……!」



* * *

「名前が思いつかない」のカンリさんから頂きました!
もうカンリちゃん素敵過ぎるw読んだ時腹筋ねじ切れるかと思ったwww
片手にブラ持ってパンツ被ってパンスト履いてる格好を無駄に逞しい妄想力で思い浮かべたらもうwww
しかもその前に風呂場で全裸で転んでるっていうwそこ妄想した瞬間竹谷が愛しくて仕方無かったw


カンリちゃん、今回は本当に有り難うございました!





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