手を繋ごう。


「わぁ!すごく綺麗!」

 その景色を間近に見たくて…思わず出てきた庭先。
 そこは一面銀世界が広がっていた。
 さくさくと音を鳴らして跡がつく白い絨毯に心躍らせていると…。
「きゃっ」
「ははっ!全く、鈍いなぁ。お前」
 背中に感じる鈍痛と冷たさ。
 バッと後ろを振り返ると、小さな雪玉を持った雅弥くんがいた。
「ひっどーい!」
「気づかないお前が悪いっつーの」
「そんなことないんだから!…なら、私も!」
「ちょっ、ま、待った!」
「待たない!」
 そう言って始まった小さな雪合戦。
 すごく子どもじみたことしてるって思うのだけれど…それでもすごく楽しく感じたのは、相手が雅弥くんだったからかな?

「なぁなぁ!どうだ?これ」
 雪合戦を終えて、思い思いに雪を楽しんでいると。急に雅弥くんがいたずら顔をしながら声を掛けてきた。
「え?…って、それって!」
「そ!雅季ダルマ」



「あははははは!そっくりかも」
 雅弥くんが冷たそうに持っていたものは、雪だるま。
 しかも、それは…雅季くんそっくりの。
「だろだろ?これ、飾っておくか!」
 少し赤くなった鼻をこすりながら雅弥くんは楽しそうに言う。
「雅季くんに怒られない?」
「うーん、そうしたら…その時はその時!」
「じゃあ…そっと飾っておこうか」
 二人していたずら顔。
 雅季くんそっくりの雪だるまをそっと飾って…満足顔。
「…くしゅんっ」
「おいおい、風邪引くなよ?」
「ちょっとはしゃぎすぎたかなぁ」
「じゃあ…そろそろ戻るか」
 そう言って、少し赤い顔をした雅弥くんはそっと手を差し出してきた。
「ん」
「…じゃあ、お言葉に甘えて」

 繋いだ手は少しだけ冷たくて、どこかあったかだった。
 ちょっと後ろで立っている雪だるまは、どこか不機嫌そうな顔。
 まるで「似てないよ」って言ってるみたい。

 ねぇ。
 後でまた雪だるま作ろうよ?
 みんなに似てる雪だるま。


―Fin―


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