君、限定。
―こんなことされたら、困る?最初からそんな状態じゃ…持たないよ?
覚悟、してね?
しとしとと雨が降る休日。
こういう日は大抵どちらかの部屋にいるのが僕たちのスタイル。
と言っても…大体彼女はむくれているんだけれど。
「あぁあー…雨、やまないかなぁ」
少しむくれ顔で窓の外を眺めている奏。僕は昨日読み始めたばかりの小説に目線を落としながら、椅子に腰掛けていた。
「天気予報では一日中雨だって言っていたよ」
「むー…知ってるもん…」
だけれど、やんでほしいのと彼女は言う。
奏はいつもそうだ。
「そんなに僕と一緒に居るのが嫌?」
意地悪く聞いてみる。そうは言ってみても、大体返事はわかっているんだ。
きっと彼女はこう言うだろう。
雨の日は、僕はいつも本ばかり読んでいると。
「そ、そんなことないもん!でも、部屋に居ると…雅季くん、いつも本読んでるんだもん」
ほらね。思った通り。
そういうとむくれ顔のまま、ベッドに寝転がる彼女。
いつもなら、僕は少し呆れ顔で奏の話を聞いたりするんだけれど。どうも今日の彼女はいつも以上につまらなそうな顔をしている。
そんなにつまらないなら、今日は少し意地悪でもしてみようか…?
僕は本に栞を挟むとそれをぱたんと閉じる。そして、彼女の居るところへと向かって近くに腰掛けた。
「それじゃあ、今日は違うことをしようか?」
「違うこと?」
僕の発言に、顔だけこちらを向ける彼女。少しだけ怪訝そうな顔をしているけれど。
「そ。違うこと」
「何?」
僕がふっと笑ってみせると、奏は身体を起こそうとした。
が。
それは叶わず、逆に身体はベッドに沈んだ。
僕が、彼女の手首を取ってぐっと身体をベッドに押し付けたから。
「ま、雅季くん!?」
「何?って聞いたよね?こういうことだよ?」
そう言って何かを言おうとした奏の口を塞ぐ。
深いキスで。
その後も、キスで口を塞ぎながら彼女の身体を支配する。
何も出来ないように。何も出来なくなるように。
「ま…さき…く…」
だんだんと息の上がっていく奏にもお構いなし。
「たまには、違うこと…したいんでしょ?」
そう言うと瞬時に顔を赤くする彼女。
「それとも、…嫌?」
何も言わない彼女に意地悪く…でも、どこか不安になりながら聞いた言葉。
奏はその言葉に、熱っぽい吐息を含ませながら
「そんなこと…ない…よ?」
と呟いた。しかし、「でも」と続ける。
「でも?」
「…困っちゃう…私…持つかなぁ?」
恥ずかしそうに、息をつきながら呟く彼女に色っぽさを感じながら、僕は耳元でそっと囁いた。
「まだまだ、だけれど?」
「え?」
そう言ってまた深いキスを落としていく。
今日は、少しだけ長いデートになりそうだね?
勿論、こんなことするのは…君、限定。
ねぇ?いつまでも、僕と恋に落ちていて。
by Masaki.S
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