愛しい距離


 君が隣に居てくれたら、他に何もいらないよ。
 ねえ、ずっとずっと一緒に居てくれる…?


 今日もいつもの調子で彼女に話しかける。
「奏ちゃん!」
「わっ、裕次お兄ちゃん!ビックリした…っ」
 後ろから急に抱きつかれた彼女は少しだけ身体を震わせると、ぱっとこちらを向いた。
 その距離、数センチ。
 にこにこ笑顔の俺を余所に、彼女の顔は林檎のように真っ赤だ。
「ち、近いよ…」
「だって、奏のこと近くで見ていたいんだもん」
 またそういうことを言う…と彼女は少しだけ呆れ顔。
 でも、知っているんだ。本当は許してくれているんでしょう?

 君とのこの距離。

「ねぇ、今日は何時に帰れそう?」
「今日?いつもと同じくらいだよ?どうして?」
「一緒に帰ろうと思って。じゃあ、校門前で待ってるからね?」
「裕次お兄ちゃん、目立つからなぁ」
 呆れて笑っている彼女。
 でもね、知ってるよ?ぱっと明るい顔になること。
「そろそろ、学校行かないと遅刻しちゃうんだけれど…」
「えー。寂しいなぁ…」
 そう言って、腕に力を込める。だって、それは本当のこと…。
「もう…そんなこと言うと…行きづらい」
「うーん…それじゃあ」
 ふわっと力を緩めて、くるっと彼女を自分の方に向かす。
 驚いた彼女。だけれど、お構いなし。
 ちゅっとリップ音を立てて、小さな甘いキスをする。
「ゆ、裕次…!」
「いってらっしゃいのキス」
 少しいたずらっぽく笑うと、あっという間に彼女の顔は林檎色。
「足りない?」



「じ、充分だよ!」
 
 あぁ、いつまでもこの子の隣に居れたらいいな。

 朝の幸せな時間。君との愛しい距離
 また生まれ変わっても、君と一緒に恋に落ちたい


by Yuji.S


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