Happy Birthday to Shun!
『ピリリリリ…ピリリリリ…』
小さく響く携帯のアラーム音に目を開け、私は時計を確認する。
時計は6時を少し回った所。
「…いけないっ!」
私は飛び起きて、急いで出掛ける支度を始めた。
今日は瞬君の誕生日。
瞬君の希望で、紅葉狩りに行く約束をしていた。
慌てて支度を整えて、約束の6時半より少し前に瞬君の部屋のドアをノックする。
まるでドアの前でまっていたかのように、ドアはすぐ開いた。
「瞬君、お誕生日おめでとう」
「ありがとう、お姉ちゃん」
瞬君は少し頬を染めて、私をじっと見つめる。
「? …私、何かおかしいかな?」
私の言葉に、瞬君は慌てて首を横に振る。
「う、ううん!そんな事、ない…」
瞬君の声はどんどん小さくなって、最後は聞こえなかった。
「瞬くん、どうしたの?」
「えっと…何でもない///さ、行こう?」
瞬君は言葉を切ると、私の手を取って玄関へと向かう。
少し見上げる位置にある、瞬君の耳は赤くなっていた。
私と瞬君は紅葉が見頃になった別荘へ向かっていた。
別荘が近付くにつれ、鮮やかに色付いた景色が目に飛び込んでくる。
「ねぇ、お姉ちゃん…別荘まで歩かない?」
景色に目を奪われている私に、瞬君がふわっと微笑んだ。
「うん!」
別荘へはまだ少し距離があるけど、私と瞬君は歩いて別荘に向かう事にして車を降りた。
紅く染まった景色の中を、私達はゆっくりと歩いていく。
少し開けた場所に出ると、圧巻という言葉しか出ない程の絶景が迎えてくれた。
私が写真を撮っている間、瞬君は少し離れた場所でじっと景色を見つめていた。
その横顔はすごく真剣で…
だけど、声をかけたら崩れてしまいそうな程繊細で。
私は言葉もなく、瞬君の横顔を見つめていた。
暫くして瞬君は小さく息を吐くと、ハッとしたように私に向き直って笑顔を見せた。
「ごめんね、お姉ちゃん?待たせちゃった…」
瞬君は何かを言いたそうに私を見つめる。
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