「「あ…」」
声が重なった俺達は、見つめ合って笑みをこぼした。

「御堂さんに気を使わせちゃった」

「悪い事しちゃったなぁ」

そう言いながら俺が奏に椅子を近付けると、奏が不思議そうな顔をする。

「お兄ちゃん?」

「せっかく要さんが席を外してくれたんだから…」

唇が触れそうな位に顔を近づけると、途端に奏の顔が赤くなる。

「どうしたの?」

「近すぎるよ///」

顔をそむけた奏の頬に優しく触れて、俺は奏の唇を奪う。

「っ///」

「好きだよ、奏」
唇を離して微笑むと、奏は頬を染めたまま俺の頬を軽くつまんだ。

「誰かに見られたらどうするの?!」

「今は誰もいないよ」

もう一度唇を重ねようとすると、奏は俺の唇を両手で塞いだ。

「だ、ダメだってば!!!」

ムキになって言う奏が可愛くて、俺は奏のおでこにキスをして抱きしめる。

「…いつになったら、俺とのキスに慣れる?」

耳元で少しだけ意地悪く言うと、奏は更に赤くなりながら呟いた。

「な、慣れる訳ないよ…っ///」

「…どうして?」

「……………」

「…言わないと、イタズラしちゃうよ?」

わざと声を低くして耳を甘噛みする。

奏はびくっと身体を強張らせた後、観念したように小さく溜息をついて口を開いた。


「…お兄ちゃんの傍にいるだけで………」


「俺の傍にいるだけで…何?」

言いよどむ奏に言葉の先を促すと、奏は顔を覆った。


「やっぱり無理!言えないっ!!」


「少しイジワルがすぎたかな…ごめん」

言いながら俺は身体を離して、ポケットに忍ばせていたネックレスを取り出す。

「お兄ちゃん、これ…?」

「奏にプレゼント!
 一目惚れして…どうしても奏に着けてほしくて」

「ありがとう…開けてもいい?」

俺が頷くのを待って、奏はケースに手をかける。

ケースを開けた奏の顔がほころぶ。

「綺麗…ありがとう」


奏の笑顔で、俺の胸も満たされていく。


「着けてあげるね」


俺は奏にネックレスを着け、奏のうなじを指でなぞる。

「お兄ちゃんっ!///」

「あははっ、ごめんごめん!
 これ以上やったら本気で怒られそうだね」

頬を染めながらぎゅっと拳を握った雫流を見て、俺は笑顔で手を離す。

「…そう思うなら加減して下さい」

奏は小さく溜息をついて笑顔を見せる。





そんな何気ない表情ですら、狂おしい程に愛しいと言ったら…奏は笑うだろうか?


どれだけキスをしても、愛し合っても…

俺の奏に対する気持ちは伝え切れていない気がするんだ。





「奏が可愛いから、それは無理!」

反論しようとした唇を、俺は甘く塞いだ。




もっともっと奏を愛したいから。




―Fin―

→雫流より


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