Happy Birthday dear Yuji !
父さんの代わりにパーティーに出席した週末、帰宅した俺の目に飛び込んできた奏の姿。
奏が出てきた場所を確認した俺は、目を疑う。
「ありがとう、修一お兄ちゃん。おやすみなさい」
笑顔を向けた奏の先に、同じ様に笑顔の修一兄さんが思い浮かぶ。
時計は23時を過ぎている。
俺がいなかったから宿題を修一兄さんに聞いてただけだよ。
でも、奏は手ぶらだったぞ?
何か用事があったんだよ!
緊急の用事って顔じゃなかったし、兄とはいえ無防備に部屋に入る時間じゃないだろ?
良心と醜い感情がせめぎ合う中、俺は慌てて頭を振った。
その日を境に、奏が修一兄さんと過ごしているのを見かけるようになった。
土曜日の午後、用事があると言っていた筈の奏は修一兄さんと一緒に帰ってきた。
日曜日は要さんと3人で出掛けたと薫くんが教えてくれた。
そして今日。
あと少しで新年を迎えるという時に、奏の部屋から出てきた修一兄さん。
その姿に、俺は堪らず奏の部屋に向かった。
奏の部屋のドアをノックしようとした瞬間、ドアが開く。
「お兄ちゃん、お帰りなさい!
えっと…どうぞ?」
俺を見てビックリした奏は、俺を部屋に招き入れた。
「どうしたの?今日は取引先のパーティーに呼ばれてるんじゃなかったの?」
そう言いながらも、どこかそわそわした奏。
「思っていたより早く終わったから帰って来たんだけど…邪魔だった?」
「じ、邪魔ってどういう事?」
慌てた奏を抱きしめて、俺は奏の肩に顔を埋めた。
気付けばもう、言葉は口から零れていた。
「…俺の事がいらないなら、ちゃんと言ってよ…」
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