相合傘


日直の仕事と先生に頼まれた用事をこなしていたらだいぶ遅くなってしまった。
教室に戻り、荷物をまとめて昇降口へと向かった。

「・・・ん?」

湿った土の匂いを感じ、ふっと外に目をやると細かい雨が降っていた。
よく目を凝らさないと見えないぐらいの雨。いつから降っていたのだろう。

「あぁ〜置き傘もないのに・・・。でも、コレくらいなら大丈夫かな?」

靴を履き、しばらく空を見上げていると、後ろから声をかけられた。

「奏さん?」

その声に振り向くと、カバンを持った修一お兄ちゃんだった。
私の隣までくると、一緒に空を見上げる。そんな横顔に少しだけ
心臓が高鳴る。

「霧雨ですね。こういう雨は結構濡れるんですよ。奏さん、傘は?」

「今日は置き傘もなくって、走って帰っちゃおうかと・・・」

そういうと、眉を下げて少し困ったようなあきれたような表情で私を見る。
“修一先生”じゃなくて、“修一お兄ちゃん”の顔だ。

「そんなことして風邪でも引いたらどうするんですか?」

「えーっと・・・ごめんなさい」

ついあやまってしまった私を見て、しょうがない子ですねと優しく笑う。
こんな何気ないやり取りに、ドキドキしてしまうのは、きっと私だけよね。

「僕は置き傘がありますから一緒に帰りましょう。ちょっと持ってきますから
ここで待っていてくださいね」

「うん!ありがとう♪」







「お待たせしました。さぁ帰りましょう。」

傘を持ってやってきた修一お兄ちゃん。でもその手には1本の傘しかなかった。

「・・・お兄ちゃん、傘は・・・」

「あぁコレだけですよ。さぁ一緒に入ってください」

そういって傘をパンっと広げると傘の中に入るように促す。
えっと、これは“相合傘”ってやつよね・・・。うっ嬉しいけど緊張しちゃうよ。
もじもじして戸惑っていると、さぁっと手を引っ張られ傘の中に入った。


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