<審査員長>

「ねぇ、奏お姉ちゃん。本当に、雅季兄ちゃんと雅弥兄ちゃんで、いいの?」

空腹を抱えて洋服選びをする双子そっちのけで食事を終えた他の兄弟と奏は。
御堂の淹れた食後の紅茶をのんびりと飲んでいた。

「うん、だって、あの二人だったら・・・普段から、私のこと名前で呼ぶし。クラスも一緒だから、どこで知り合ったのって聞かれても、クラスメイトですって言えるでしょう?」

「それだけの理由ですか?」

そう言って、奏に微笑みかけたのは修一だ。

「・・・じゃあ質問を変えるよ。本当は、雅季兄ちゃんと雅弥兄ちゃんの、どっちがいいの?」

瞬も、奏に再び鋭い質問を投げかける。

・・・その質問に真っ先に反応を示したのは、あろうことか裕次だった。
紅茶を思い切り吹き出した裕次は、ガチャンとカップを置いて、奏を問いただす。

「え、ええ!? 何それ瞬くん! 何それ奏ちゃん! お、お・・・お兄ちゃんに正直に言いなさい!」

奏は、目を丸くして、兄弟たちの視線を受け止めていたが。

やがてふっと微笑むと、紅茶のカップに目を落とした。

「ふふっ・・・さーて、ね」

その意味ありげな微笑みに、兄弟たちは思わず顔を見合わせる。

しかし、奏はそう言ったきりカップに唇をつけるのみで・・・


兄弟たちの質問に答えることはなかった。


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