<候補者2・雅弥>
・・・ったく・・・なんだよ、オーディションって!!
雅弥は、自室のウォークインクローゼットの中を行ったり来たりしながら、服を選んでいた。
こちらも、もちろん雅季のものに匹敵する規模のウォークインクローゼット。
全く手付かず、という状態ではないのだが・・・使われている部分と使われていない部分の差が明白だ。
入り口側に、トレーニングウェアがまとめて収納してあるようで・・・
ハンガーからずり落ちかけたウインドブレーカー、その下に転がるサッカーボール、スポーツバッグ。その上には無造作に投げ出されたタオルが。
さすがにある程度はメイドの手が入っているものの、クローゼットの主のガサツさを代弁するには十分だった。
それに引き換え、奥に並ぶ洋服たちのキレイなことと言ったらない。
ジャケット、シャツ、パンツ・・・まるでショップの棚のように、キチンと整理されて手付かずのままだ。
ちぇ・・・いっくらなんでも、彼氏役っつぅのに、テキトーな格好するわけにはいかねーよな。
トレーニングウェアだったら、こんなにあるのによ・・・
有名ブランドがこぞって差し出してくる、高機能で動きやすいウェアを横目に、雅弥は洋服を漁る。
奏の、彼氏役か・・・
あいつが言ったとおり、兄貴たちや瞬、要や柊じゃ合わないことは分かってたけど。
誰が立候補しようと、絶対俺が奪い取るつもりだったけど。
奏が順番に兄貴たちをフッてったときは、すげぇ嬉しかったんだけどな・・・
そうなんだよ、俺の最大のライバルは・・・結局、雅季ってことになるんだよ!
結局、一番負けたくない相手は、雅季なんだ。
ああっ、くそっ!!
とにかく、奏の隣に立つのは、俺じゃないと・・・ヤなんだよ!
がしがしと頭をかきむしる雅弥の目に、重ね着風の白いカットソーが止まった。
お、これ良くねぇか?
無難そうだし、何よりベストと一緒になってんのがいいな。
上着とか、探さなくても済むし!
うんうん、いいんじゃね?
あとこれになんかテキトーなジーパン合わせりゃ・・・
無造作に、来ていたものを脱ぎ捨てて、カットソーに袖を通す雅弥だったが・・・
あれ、なんだこれ?
どこに手ェ入れるんだよ?
・・・くっついてんのか?
・・・え、違う?
・・・ビリッ!
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